2021.09.16

出来そうで出来ていない使用済みフィルム製品のクローズループの構築について~Film to Film~【前編】

 使用済みフィルム製品のリサイクル、御社はできていますか。商品梱包用の袋や荷崩れ防止のためのストレッチフィルムなど、フィルム製品の使用量が多いという企業も少なくないかと思います。しかしながら、それらをワンウェイ(使い捨て)にせず、リサイクルできている企業はごくわずか。今回は出来そうで出来ていない使用済みフィルム製品のクローズドループの構築について、ご紹介致します。

ますます高まるプラスチックを資源として循環させる「環プラ」ニーズ

 2017年の中国の廃棄物輸入規制を皮切りに、東南アジア各国も相次いで輸入規制に舵をきったがために、プラスチック廃棄物を海外に輸出するということが2017年以前と比べて格段に難しくなっているということは、もはや周知の事実と言えるかと思います。加えて、20211月からは「バーゼル法」(特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律)が改正され、プラスチック廃棄物の海外輸出は、よりハードルの高い選択肢となりました。
 事実、日本の廃プラスチックの輸出量は2016年には152.7万トンありましたが、2020年には82.1万トンにまで減少しており、バーゼル法の改正の影響により、2021年にはより少なくなることが想定されます。

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 こうした動きの影響により、これまで有価で売買され、海外でリサイクルされていたプラスチック廃棄物の行き場がなくなり、国内で産業廃棄物として処理されるというケースが発生しています。その上、来年にはプラスチック資源循環法が施行され、排出者責任、拡大生産者責任がますます問われるようになります。もちろん今の状況は芳しいものではなく、国内においてプラスチック廃棄物をリサイクルする、資源として循環させる「環プラ」のニーズが高まっているのです。

使用済みフィルムのリサイクルの現状

 先のバーゼル法の改正により、海外輸出が困難になったアイテムの一つに、いわゆるフィルムベールがあります。フィルムベールとは、商品梱包用の袋や荷崩れ防止のためのストレッチフィルムなどの軟質フィルムをキューブ状に圧縮梱包したものです。
 環境省の「プラスチックの輸出に係るバーゼル法該非判断基準」では、製品の製造工程等から排出される未使用の市場流通していないフィルムベールは規制対象外とされていますが、使用済み由来のものについては、飲食物や泥、油、錆などの汚れが付着していないことなどの条件を満たす必要があり、リスクマネジメント、コンプライアンスの観点から、海外輸出することは得策であるとは言い切れません。バーゼル法改正以降、税関検査が強化されており、万が一、税関検査で輸出不可の判断が下った場合、排出社責任が問われ、支払わなければいけない代償は甚大だからです。
 とはいえ、国内で使用済みフィルムのリサイクルを行うことも容易ではありません。ゴミ袋やストレッチフィルムなどのフィルム製品によく使われるPE(ポリエチレン)という樹脂のリサイクル率について見てみましょう。

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 一般社団法人プラスチック循環利用協会様のデータによると、2019年における日本国内の廃プラ総排出量は850万トンあり、そのうちPE299万トンを占めています。そのうち、マテリアルリサイクルされているPE22万トンに過ぎず、PEのリサイクル率はわずか7.4%という状況です。このデータにはボトルやコンテナなどをはじめとする硬質系のPEも含まれるため一概には言えませんが、使用済みフィルムをリサイクルできている企業はごく一部であるということが想定されます。
 私たちパンテックは「環プラプロデュースカンパニー」として日頃から多くの企業様に対してプラスチックのリサイクルのご提案をさせていただいておりますが、独自に環境目標等を策定されているような環境意識が高い企業様におかれましても、使用済みフィルムのリサイクルスキームを構築できているというところはあまり多くはありません。すでに取り組まれている企業様もありますが、まだまだ少数派だと言えます。
 先日ご紹介した生活協同組合連合会コープ中国四国事業連合(コープCSネット)様では、使用済みフィルムからサニタリーバッグを作って自社利用するというクローズドループを構築・運用されていますが、以上のような状況を踏まえると、コープCSネット様がいかに先進的な取り組みをされているかがお分かりになるのではないでしょうか。

【参考】コープCSネット(生活協同組合連合会コープ中国四国連合)の取組事例
https://www.pantechco.jp/casestudy/20210817

使用済みフィルムのリサイクルは国内での再生原料加工がカギ

 私たちパンテックはリスクマネジメント、コンプライアンスの観点から、使用済みフィルムをそのまま海外へ輸出することを推奨しておりません。品質管理を徹底して行い、バーゼル法に抵触するリスクがないと評価されたアイテムについてはその限りではありませんが、基本的には使用済みフィルムを国内で再生原料(リペレット)加工した上で、国内あるいは海外のインフレメーカーにて製品化を行っております。
 コープCSネット様のように、使用済みフィルムから作った最終製品を排出元様にお戻しさせていただくことでクローズドループを構築する場合もあれば、再生原料化したものを国内外のフィルムメーカーにご販売する場合もあり、排出元企業様のご要望に応じたリサイクルスキームの構築のご支援をしております。なお、再生原料加工を施す(ペレット状にする)ことで、バーゼル法の規制対象外となりますので、問題なく海外に輸出することも可能です。
 いずれにせよ、使用済みフィルムベールをそのまま輸出するハードルが高くなっている今、国内でいかに再生原料加工するかということが、法令を遵守したリサイクルスキームの構築にとって非常に重要な意味を持ちます。
 私たちパンテックは国内の複数の提携パートナーに再生原料加工を委託し、高品質な再生プラスチック原料を製造しています。

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次週【後編】を公開予定。乞うご期待くださいませ。






まとめ

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