2021.09.29

出来そうで出来ていない使用済みフィルム製品のクローズループの構築について~Film to Film~【後編】

 

 この記事は「FILM to FILM 出来そうで出来ていない使用済みフィルム製品のクローズドループの構築について」の
後編です。
※ 前編はこちら▶︎https://www.pantechco.jp/blog/20210916

使用済みフィルムの国内リサイクルを阻む3つの要因

 SDGsやESGが叫ばれ、グリーンシフトが進む中、商品梱包用の袋や荷崩れ防止のためのストレッチフィルムなどの軟質フィルムを使う企業では、それらをワンウェイ(使い捨て)にせず、リサイクルしているかということが、今後、企業の社会的責任として問われていくことになるのではないでしょうか。
 「混ぜればごみ 分ければ資源」と言われたりもしますが、ことプラスチックに関しては、いくら分別してもリサイクルできない素材もある中で、軟質フィルムは単一樹脂で構成されている場合が多く、比較的リサイクルしやすい素材です。

では、なぜリサイクルが進んでいないのでしょうか。その主な要因として、以下の3つが考えられます。

① 分別ができていない

 ゴミ袋やストレッチフィルムなどのフィルム製品によく使われる素材はPEですが、商品梱包用の袋などには、PP(ポリプロピレン)製やPET(ポリエチレンテレフタレート)製、PVC(ポリ塩化ビニル)製のものもあります。言うまでもなく、PEPPPETPVCはそれぞれ異なる樹脂であるため、リサイクルするためにはそれぞれを分別する必要があります。加えてPEPEでも、HDPE(高密度ポリエチレン)とLDPE(低密度ポリエチレン)がありますので、それらを分別することが求められます。さらにシールやラベル、紙なども異物となるため、除去することが推奨されます。
 そもそも樹脂の種類が分からなかったり、作業効率を優先するオペレーションルールなどから、分別ができないためにリサイクルができないということはよくあります。
 ストレッチフィルムだけを集めるなどアイテムを限定したり、使用するフィルムの素材をLDPEに統一するなど、そもそも分別しなくても良いようにする工夫も有効です。「混ぜればごみ 分ければ資源」ですので、まずは分別を徹底しましょう。私たちパンテックは分別指導をはじめ、サーキュラーデザイン、オペレーションの改善など、リサイクルに係る導入支援も実施しています。

② 輸送効率が悪い

 輸送効率もリサイクルをするためには重要な要素です。プラスチックに限らず、リサイクルする際にはリサイクル工場へ運搬しなくてはなりません。その時にトラックの最大積載重量に対して、貨物の重量が軽い場合、運搬費用が高くつき、リサイクルコストの高騰に直結します。
 単純に発生量が少ない場合はもちろん、未圧縮フィルムの場合も輸送効率の悪化を招きますので、回収方法を工夫して重量を確保したり、圧縮梱包機を導入するなどの対応が必要となります。設備の導入となると初期投資を心配されるかもしれませんが、発生量に応じて、最適なスペックのものを導入すれば、短期での償却も可能です。弊社が支援させていただいた事例では、わずか3ヶ月で初期投資以上のコストメリットを生み出し、かつ圧縮梱包加工専任のスタッフを雇用することができている企業様もいらっしゃいます。
 特にフィルムのリサイクルの場合、最終製品の単価が低いことが多いため、輸送費を含むリサイクルコストを抑えることがとりわけ重要な意味を持ちますので、関心のある方はぜひ一度ご相談ください。

③ 使用済みフィルムのリサイクルに対応できる企業が少ない

 使用済みフィルムをリサイクルする場合、まず使用済みフィルムを再生原料(リペレット)加工する必要がありますが、そもそも日本にはその加工を行える工場があまり多くありません。その上、仮に再生原料化できたとしても、再生原料を用いて製品化を行えるメーカーも限られているというのが現状です。 
 意外に思われるかもしれませんが、フィルムメーカーの中には、バージン原料しか使ったことがないという企業も少なくないのです。ご想像の通り、再生原料はバージン原料よりも品質が劣ります。異物や異樹脂が混入していることもあり、物性も安定しにくい素材です。そのため、成形の難易度が上がるうえに、最終製品の品質の低下を招いてしまうこともあるのです。再生原料はバージン原料に比べてはるかに扱い辛く、成形には高い技術力が要求されます。
 先に述べた通り、2017年に中国が廃棄物の輸入規制を行うまでは、国内のフィルムベールの大半がそのまま海外に輸出され、現地にてリサイクルされていた関係で、国内においてフィルムのリサイクルニーズはそれほどなかったわけです。結果、日本国内ではフィルムのリサイクルや製品化を行える企業が育っておらず、現在のような状況に陥っているのです。
 また回収から再生原料加工、そして最終製品化に至る各工程はそれぞれ専門分化されており、リサイクルスキームを切れ目なく運用することも簡単ではありません。すなわち、排出企業に対して、クローズドループを提案できる企業も限られているのです。その点、私たちパンテックは各工程の提携パートナーが全国各地にいるため、ワンストップでソリューションを提供することが可能です。

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「リサイクルをしない」という選択肢の裏に潜むリスク

 これまで述べてきたような課題はあるにせよ、使用済みフィルムは素材的にはリサイクルに適しており、リサイクル手法も確立されており、使用済みアイテムの中では、クローズドループがしやすいと言えるでしょう。しかしながら、実際には「使用済みフィルムをリサイクルする」という選択をしていない企業が多いのが現実です。 
 それはなぜなのか。理由は、「意思決定ができていない」の一言に尽きるのではないでしょうか。実際にリサイクルスキームを運用するとなると、これまで産業廃棄物として処理していた使用済みフィルムを有価売却できるものの、現場でのオペレーションを変更する必要が出てきたり、場合によっては設備の初期投資なども伴ってきます。
つまり、企業が使用済みフィルム製品のクローズドループの構築への一歩を踏み出せないのは、そうした作業負担や経済的な負担がボトルネックになっているように思います。
  確かに負担を避けたいという考えは理解できますが、社会潮流や現状の地球環境を踏まえると、決して支持される選択ではないでしょう。負担を避けるという選択は、短期的には良い選択かもしれません。しかし、その結果として地球環境に負荷を与えることになるのであれば、その選択の裏には企業やブランドとしての価値を毀損するリスクが潜んでいることを理解しなくてはならないように思います。現実に環境を蔑ろにしている企業からは消費者離れや顧客離れ、投資の撤退などが起こっており、事業活動の危機に陥った、あるいは倒産に追い込まれた企業もあるのです。

「使用済みフィルム製品のリサイクル、御社はできていますか。」

 もし出来ていないのであれば、来年のプラスチック資源循環法の施行を前に、使用済みフィルム製品のクローズドループの構築について、改めて検討してみてはいかがでしょうか。
私たちパンテックは「環プラプロデュースカンパニー」として、御社のプラスチック資源循環をサポート致します。

下記よりお気軽にお問合せください。

まとめ

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