株式会社TRIFE DESIGN

プラスチック資源循環促進型ブランド・プロジェクト「ReTA BASE」をパンテックと共に始動! サーキュラーデザインに重きを置いた新たなモノ創りに挑戦

TRIFEDESIGN
株式会社TRIFE DESIGN

ディレクター/コンセプター|五藤 利哉 様

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事例の概要

アパレル業界出身のボードメンバーによって設立された株式会社TRIFE DESIGN(以下、TRIFE DESIGN)は、アパレル製品の海外からの輸入率の高さやそれに伴う国内工場や職人の衰退、アパレル産業が与える環境負荷などに対する問題意識からサーキュラーエコノミー型の「モノ創り」を志向し、自社ブランドとして「New Life Project」(以下、NLP)をスタートさせました。
2022
年には志を同じくするパンテックとプラスチック資源循環促進型アップサイクルブランド / プロジェクト「ReTA BASE」を始動。サーキュラーデザインを念頭に置き、再生プラスチック原料を用いた生地開発からトートバッグなどの最終製品の製造・販売、ブランド戦略に至るまで共に進めてきました。
なぜ異業種であるパンテックと共創し、「ReTA BASE」が生まれることになったのか。また「ReTA BASE」を今後どのように展開していこうと考えているのか。「ReTA BASE」の立ち上げから関わるTRIFE DESIGNのディレクター/コンセプターの五藤さんに伺いました。

※ 本記事の掲載内容は全て取材当日時点の情報となります。

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1.「サーキュラーデザイン」に対する想い

―  「New Life Project」は「モノ創り」と「環境」をキーワードとされていますが、「サーキュラーデザイン」への関心はどういった経緯で生まれたのでしょうか。 

私が新たな取り組みを始めるときに必ず意識していることが2つあって、ひとつは「社会的な潮流を読むこと」もうひとつは「区別化」を実現することです。

「社会的な潮流を読む」という点では、あらゆる産業がサーキュラーエコノミー(循環経済)へ移行していく中で、アパレル業界としても従来型の「大量生産」「大量消費」「大量廃棄」を続け、短いライフサイクルを繰り返すことには、環境的にも産業的にも持続可能性を失いつつあるように思います。また、海洋プラスチック汚染や衣料廃棄物の問題、原材料の調達や製造における人権配慮などにも、企業の責任として向き合う必要がある。だからこそ、何をするにしても、今や「サステナブル」は欠くことのできない視点だと言えるかと思います。

加えて、よく「差別化が必要だ」といった声は耳にしますが、私は単なる差別化だけでは他との差異を明確に打ち出すことは難しいと考えています。むしろ、従来とはまったく異なる視点や価値観をもとに、全く新しいものを創造する「区別化」の発想こそが重要だと思っています。

社会的な潮流を読み、区別化を意識する。そうした中で、資源循環を念頭に置いてライフサイクルを設計する「サーキュラーデザイン」に行きつきました。

サーキュラーデザインは、プロダクトとしての美しさという意匠性や機能性に留まらず、資源をいかに循環させるかということに重きを置きます。生地や資材を商社から調達して製品をつくるよりも格段にステークホルダー(利害関係者)が増えることになり、調整や折衝、ディレクションの領域も広範になります。そういうこともあって、サーキュラーデザインを念頭にライフサイクルを再設計することは一朝一夕でできることではありません。ただ、TRIFE DESIGNでは少しずつでもサーキュラーデザインに重きを置いたモノ創りに取り組む必要があると考え、アメリカの哲学者、ジョン・デューイ氏の「Learning by doing(実践しながら学んでいく)」の考え方にもとづき、「NLP」を立ち上げました。

サーキュラーデザインは一社だけで完結できません。だからこそパートナー選びが非常に重要です。価値観やビジョンが共有できる信頼できるパートナーとでなければ、互いの知見や経験を結集させ、新たな価値を創出していくことは困難だと感じます

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2. パンテックをパートナーに選んだ理由と「ReTA BASE」ブランド誕生の経緯

パンテックとの出会いはどのようなものでしたか?

「区別化」を掲げる以上、他のブランドとは異なるアプローチが必要です。ですが、アパレル業界の枠内だけで新しいことを探しても、正直なところ斬新なアイデアはほとんど出尽くしていると感じています。だからこそTRIFE DESIGNでは異業種との共創を強く意識するようにしています。まったく異なる分野の方々と手を組むことで業界内の常識にとらわれない発想が生まれ、それが事業化につながる大きな可能性があると考えているからです。

だから、パートナーを探すにしても、ファンション系の展示会ではなく、あえてファッションとは縁遠い中小企業が集まる展示会などにも足を運ぶようにしていました。
そんな中で、資源循環をテーマにした展示会でパンテックさんのブースが目に留まりました。

ほかの静脈系の企業とは異なり、ブースはもちろんのこと、再生原料のサンプルやプロダクトの展示、壁面のグラフィックが意図を持ってデザインされていることが一目見て分かりました。だから正直、はじめはプラスチックリサイクルというテーマありきでパンテックさんに興味を持ったわけではありません。まず「デザインについて理解があるおもしろそうな会社だな」という印象があったので立ち寄って詳しく話を聞いてみると、実はプラスチックリサイクルに強い企業だとわかり、一段と興味を惹かれました。

展示会での出会いからパンテックと「ReTA BASE」を立ち上げるに至った経緯はどのようなものだったのでしょうか。 

展示会のあと継続的に情報交換をさせていただいていたのですが、ある時、滋賀の本社へお伺いする機会がありました。そのときにパンテックの担当者さんが手掛けられたサーキュラーエコノミーの事例についてお聞かせいただきました。それはレジ袋有料化のタイミングで某小売企業の倉庫にある未使用のプラスチック製買い物袋をマテリアルリサイクルして防災シートに生まれ変わらせるという取り組みで、その時に作ったシート(フラットヤーンクロス)のサンプルなども実際に見せていただきました。

フラットヤーンクロスは汎用性のある素材なので、最終製品としては防災シート以外にもバリエーションが考えられ、TRIFE DESIGNが得意とするバッグなどにも展開できます。小売企業の事例は単発的な一過性の取り組みですが、対象とする素材を変えれば、継続的な取り組みにすることも可能です。そうした気づきから、プラスチックの資源循環に専門性を持ち、不要なプラスチックの回収・再生原料化から製品化まで一貫して対応できるパンテックさんと、バッグをはじめとするライフスタイルグッズの企画・製造・販売に強みを持つTRIFE DESIGNが共創して、プラスチックの資源循環型ブランドを立ち上げられないかという話になり、電話やチャット、ウェブ会議で侃侃諤諤のディスカッションを行いながら、企画を整理していきました。

回収・再資源化の対象とするプラスチック資源を何にすればいいのか。どこで加工・製造を行えるのか。バージン原料より品質の劣る再生プラスチック原料を最終製品のどこに使えば最終製品の品質を落とさずに済むのか。この取り組みに関心を持っていただいた企業や個人に参画してもらえるようなプラットフォームにできないか。商標をどのように扱い、最終製品はどこで売るのが良いのか。
このようにプロダクトどのように作るのかというところから、事業として成立させるための仕組みをどのように組み立てるのかといったところまで細部を詰めていきました。アイディエーションから企画を整理し、シートの試作に至るまで3ヶ月くらいだったと思いますので、こうして振り返ってみるとかなり密なコミュニケーションをしていたんだと思います。

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パートナーシップによる共創を成功させる条件はなんだと思いますか。 

先ほど申し上げたようなプロセスが成り立ったのは、パートナーがパンテックさんだったからだと思います。
そもそもパンテックさんとの共創に至った背景には、パンテックさんが業界を俯瞰して捉えており、我々と感覚的・思想的に近い価値観があったことがあります。いくら知識や経験が優れていても、自業界のことしか分からなかったり、根本的な価値観が異なっているようでは共通理解ができず、連携や共創はままなりません。
パンテックさんはあらゆる業界と取引をしているということも関係しているのでしょうが、情報感度が高く、発想も柔軟なので、コミュニケーションがとりやすく、意思疎通や共通言語化をスムーズに行えたと思っています。
私から提示する課題に対しても、引き出しが多いのでレスポンス良く建設的な提案を示してくださり、それに対して私自身が新たな意見や追加の要望を返すと、更なる発展的アイディアをご提示いただけました。こうした双方向的かつ創造的な対話ができるかどうかが、ポジティブな共創関係を築くことに極めて重要な意味を持つと感じます。
また、再生原料の配合率や事業収益といった「数字」の追求はもちろん重要ではありますが、それを偏重しすぎると、新しい取り組みの足枷にもなり得ます。志や理念の共感、長期的な価値創出を重視した取り組みこそが共創の持続性につながると考えていますし、パンテックさんとはそうした部分が一致したからこそ、本プロジェクトも円滑に進んでいったんじゃないかなと思います。

3. 「ReTA BASE」の業界での反応

― 「ReTA BASE」に対するアパレル業界屋ユーザーからの反応はどうでしたか? 

セレクトショップのバイヤーやユーザーからもポジティブな反響を多くいただいています。特に軽量性や防水性といった機能面について高くご評価いただいている印象です。ReTA BASEの素材は非常に軽量で耐久性があり、汚れた際にも水洗いができるため、シティユースのみならず、ビーチやキャンプなどのアウトドアシーンでも幅広くご活用いただけます。広いマチがあり、ポケットが多く配置されているなどユーザビリティが高いことも、こうした評価に繋がっているんだと思います。

おかげさまでReTA BASE2022年のローンチ以降、お取り扱いいただく企業が増えております。販売促進にあたっては我々から能動的な営業も行いますが、最近ではインスタグラムなどのSNS経由で直接コンタクトいただくケースも増えてきました。

これまでお話ししてきたようにReTA BASEはサーキュラーデザインを基本思想としており、再生プラスチック原料を使用した製品ではありますが、あえて環境に配慮していることを強調するようなプロモーションやメディアリレーションズは控えており、あくまでも「かっこいいから」「使い勝手が良いから」という理由で選んでいただけることを目指しています。環境への配慮が当たり前になっていく中で、「環境に優しいから」というエシカル消費の文脈での消費は意味を失っていきつつあると思いますので、プロダクト自体を魅力に感じてもらうことがまず先にあり、その上でサーキュラーデザインなどの考え方に共感をしてもらえたらと考えています。ReTA BASEのブランディングを行なっていく上では、その順番にも意識的に取り組んでいます。

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4. 「ReTA BASE」ブランドの業界での反応

― 「ReTA BASE」の今後の展望をお聞かせください。 

ReTA BASEはローンチ以降、モデルのバリエーションも拡充され、某有名ブランドからの特別注文や企業との共創事例などの展開も生まれていますが、今後の展望としては、ブランドとして市場でポジションを確立させていきつつ、同時に再生プラスチック原料の使用比率を高めることは継続的にチャレンジしていきたいと考えています。

サステナブルな資源循環を目指す取り組みは世界的で試行錯誤されていますが、最初から理想像を描くことは困難です。実際、資源の完全循環や水平リサイクルなどを実現できている事例は世界的にもごくわずかだと思います。そのため、最終的な理想像を描きつつも、現段階で「どこまで実現できているのか」をきちんと示し、段階的に発信していくが重要だと思います。

現時点ではReTA BASEの素材には使用済みストレッチフィルム由来の再生プラスチック原料が15%配合されていますが、
フラットヤーンやコーティング加工などの再生比率をこれまで以上に高めていけたらと思っています。それには技術的な課題をクリアしないといけませんし、静脈を含む多くのステークホルダーとの共創が必要になりますが、一つひとつ、着実にステップアップしていきたいですね。

ReTA BASEのような共創型のプロジェクトで大切なのは、ブランドや商標、利益などを特定の企業だけが独占しないことです。それらを特定の一社が独占してしまうと、ほかの参画企業がメリットを感じにくくなり、持続的な共創関係を維持・発展させることが難しくなってしまいます。ですから、ReTA BASEでは、中心にReTA BASEを置いて、その周りに弊社やパンテックさんをはじめ、取り組みに共感していただけたり、ReTA BASEを発展させるための技術やアイディアをお持ちの企業にご参画いただける余白を残しています

参画企業それぞれの強みを掛け合わせながら、それぞれが責任を持ってブランドや商標を管理する。そんな開かれた仕組みの中でプロジェクトを推進し、ReTA BASEとしてのブランドの成長や拡大を目指していけたらと思っています。

― 最後に、パンテックに期待することをお聞かせください。 

パンテックさんはプラスチックリサイクルに関して、名実ともに日本有数の企業ですし、プラスチック資源の回収・再生原料化のみならず、再生プラスチック原料を用いた製品化フェーズについても知見を有する数少ない企業だと思います。

一方で業界が違うということもあり、パンテックさんにない知見やリソース、ネットワークなどが弊社にはあります。だからこそ、互いに補完し合うことができ、ReTA BASEのような事例を生み出せたんだと思いますが、これからも既存の枠にはまらない新たな価値を社会に提示していきたいですね。

例えば、パンテックさんのプライベートブランドを立ち上げることに挑戦できたらおもしろいかもしれません。原材料の供給だけでなく最終製品製まで手掛ければ、値決めの自由度も高くなりますし、企業ブランドの形成にも寄与するかと思います。短期的な売上や利益を追い求めるのであれば、こうしたチャレンジはなかなか難しいかもしれませんが、パンテックさんは長期的な視点に立って、自社の取り組みが社会やステークホルダー、企業ブランドにどんな価値をもたらすかまで考えながら経営されているかと思いますので、そうしたチャレンジへの投資も有効かと思います。

これからも素材開発から製品づくり、ブランド展開など、業界の枠を越えて、持続可能な社会の実現に貢献する取り組みをパンテックさんとともに生み出していけたらと考えています。

 

◼️ ReTA BASE製品詳細はこちら(New Life Project ウェブサイト)
https://newlifeproject.jp/ja/reta-base/