株式会社パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ 車載エレクトロニクス事業部 機構デバイスビジネスユニット様

廃プラスチックの価値向上を通じて、社内の環境意識向上へ

株式会社パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ
車載エレクトロニクス事業部 機構デバイスビジネスユニット様

環境に優しくすれば経営に恩返しが出来る。
パンテックとの取引による成果は、廃プラスチックの価値向上に繋がったことです。やっぱり会社が儲からなければ意味がありません。

環境経営に積極的に取り組むパナソニックグループ。
その中でも省エネルギーやリサイクルで劇的な成果を上げてきたのが、オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 車載エレクトロニクス事業部 機構デバイスビジネスユニットです。
その取り組みの中で中心的な役割を果たしてきたのは環境保護推進課 係長・赤崎嘉一氏。
財団法人省エネルギーセンターのエネルギー使用合理化専門員も務める赤崎氏に、同事業所における取り組みと、パンテックとの取引が始まった経緯、さらにその成果などをうかがいました。

● 株式会社パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 車載エレクトロニクス事業部 機構デバイスビジネスユニットについて

160609lbKNB8JB

オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社(以下、AIS社)は、パナソニック株式会社の社内カンパニーの1つである。車載インフォテインメント関連機器、車載エレクトロニクス、電池、電子デバイス、半導体、生産設備システムなどのBtoBソリューション事業を展開している。「車載」「産業」分野を軸に、デバイスからシステムまで幅広いソリューション提案を行う。その中で、福井県敦賀市に拠点を置く車載エレクトロニクス事業部 機構デバイスビジネスユニットは、インパネスイッチやドアスイッチ、コンビスイッチなど各種スイッチを中心に、舵角センサー、スマートエントリーなど、国内自動車メーカーを顧客とする車載関連製品の開発・製造を担っている。
また、省エネルギーやリサイクルの取り組みでは、環境経営を積極的に推進するパナソニックグループ全体の中でも先進拠点として認知されており、全国の拠点からの視察が絶えない。所在地は福井県敦賀市。設立は1966年12月。従業員数は約660名(2016年4月現在)。

新しいウインドウで開きます

Press1:
パンテックとの取引状況

Q:パンテックとの取引状況をお話しください。

2015年7月から取引をスタートしております。他事業所でも取引が始まろうとしています。

160607uHPodT2BAIS社 車載エレクトロニクス事業部 機構デバイスビジネスユニットは、パンテックに廃プラスチック材の有価買取を委託しています。

当事業所由来の廃プラスチックの種類は多岐に渡りますが、ほとんどの種類について有価資源化を実現しています。その中で、現在パンテックに売却しているのは、ABS、PC+ABS(PC/ABS)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミド(PA)、液晶ポリマー(LCP)、ポリアセタール(POM)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)です。これらは自動車用のスイッチの製造工程で出るスクラップ材、または外部で生産された部品の輸送に使われる容器や梱包材です。

2015年7月にオートモーティブ&インダストリアルシステムズ社(以降AIS社)とパンテックとの取引は当事業所からスタートしましたが、対応の速さ、買取価格の優位性から、AIS社本部にも紹介しました。すでに商談は進み、他事業所でも取引が始まろうとしています。

Q:パンテックとの取り決め事項を教えてください。

排出物が種類ごとに混在しないよう完全分別する。輸送効率を向上させるために、減容加工した上でトラックが満載になる量が溜まったら引取り依頼をかける。

パンテックとは、以下のような取り決めをしています。この条件を満たす前提の見積もりを出してもらっています。

【分別に関する取り決め】
廃プラスチックの種類が混在しないよう、識別装置などを使い完全に分別する。

【輸送効率向上のための取り決め】
①分別した廃プラスチックを粉砕・造粒・減容加工する。
②4t車または10t車いずれかのトラック1台が満載になる量がストックされた段階で引取依頼をかける。

以上の条件を満たしたうえで、次のような回収フローで売却しています。

(1)各現場で廃プラスチックを分別し保管
(2)リサイクル担当者が各部署を巡回して回収
(3)分別状態を再確認後、減容加工してフレコン、パレットに梱包・保管
(4)条件を満たす量が溜まったらパンテックへ引取依頼
(5)パンテックがトラックを手配し積み込み
(6)パンテックが計量し、引取明細書を発行
(7)引取代金の振り込み

 

Press2:
省エネルギーとリサイクルを「見える化」で推進

Q:現在パンテックに有価資源化をご依頼されている廃プラスチックは、以前はどのような処理をされていたのでしょうか。

パンテックとの取引以前から、ほとんどの廃プラスチック類を有価資源化しています。「サーマルリサイクルはリサイクルではない」との信念から、マテリアルリサイクルを推進してきました。

当事業所では、パンテックとの取引以前からほとんどの廃プラスチックを有価資源化=マテリアルリサイクルしていました。パナソニックグループは環境経営に力を入れて取り組んでいますが、その中でも当事業所は高い環境意識を持って生産活動に取り組んでいると自負しています。ISO14001の取り組み体制も確立していますし、地域の環境保護活動にも積極的に参加しています。

そういった背景のもと、私自身、「環境に優しくすれば経営に恩返しできる」との考えに立ち、担当業務を遂行してきました。例えば、2000年度から担当している省エネルギーでは、当事業所のCO2排出量を、2015年度までに87%削減しました。また2003年から担当している廃プラスチックのリサイクルでは、サーマルリサイクルの割合が全体の約8割を占めている状態から2007年には5%以下にまで減らすことに成功しました。産業廃棄物を焼却してエネルギーを回収することをサーマルリサイクルと言いますが、材料として再生できないと本当の意味でのリサイクルではないと考えています。

 

Q:目を見張る成果ですが、どのようにして実現してこられたのでしょうか。

省エネルギーやリサイクルは家計簿と一緒です。「見える化」で無駄を発見し、PDCAサイクルを回しながら削減してきました。

いずれも大事なことは「見える化」です。省エネルギーもリサイクルも家計簿と一緒で、収支を明らかにすることが重要です。「見える化」によって無駄を発見し、原因の究明、対策の立案と実行、振り返りとPDCAを繰りすことで成果を上げてきました。

省エネルギーを例にすると、もともとエネルギーの使用量は事業所全体の総量しか把握出来ませんでした。そこで設備ごとに把握できる仕組みを導入したところ、設備を運転していない時もエネルギーを消費している実態がわかりました。そこで、設備の夜間・休日の停止、エア・蒸気漏れ対策、断熱・排熱回収、照明の間引き・照度適正化等の対策を順次実施することで、当事業所全体のCO2排出量を約87%削減することに成功しました。

Press3:
廃プラスチック類のリサイクル推進の経緯

Q:廃プラスチックのリサイクルはどのように進めてこられたのでしょうか。

リサイクルを進める上で重要なことは商品価値を高めることです。そのために分別、減容加工ができる環境を整備しました。

廃プラスチックのリサイクルの「見える化」は、省エネルギーよりも単純です。各製造チームで廃プラスチックを種類ごとに分別して処理すれば、それぞれの排出量と処理コストが把握できます。
問題はそれをいかに減らすかです。産廃を減らす方法は3つあります。「Reduce(リデュース)=減らす」、「Reuse(リユース)=繰り返し使う」、「Recycle(リサイクル)=再資源化する」の、いわゆる3Rです。「Reduce」は、製造工程や輸送工程を見直すことで歩留まり率を向上させたり、容器や梱包材を極力不要にしたりして排出量を減らすことです。「Reuse」は、輸送用のトレイなどを使用した後、廃棄せずに再利用することです。この「Reduce」と「Reuse」が完全に出来れば廃棄物は出ません。しかし、現実としてそれは不可能です。そこで「Recycle(リサイクル)=再資源化する」が必要となります。例えば弊社ではランナーなどは極力再生ペレットして原料に戻しますが、再利用出来なかった樹脂は再資源化し売却しています。

再資源化を進めるにあたって重要なことは、商品価値を高めることです。そのためには分別や減容などの手間をかける必要があります。弊社では、設備投資とマネジメントの両面から、完全分別と減容加工ができる環境を整備しマテリアルリサイクルを拡大してきました。

 

Q:具体的にはどうされたのでしょうか。

減容プレス機1台、樹脂粉砕機4台、造粒減容機1台の他、近赤外線樹脂識別装置が稼働中。また、全員活動として取り組んだことが成果に繋がりました。

まず着手したのが設備投資です。例えば梱包資材のビニール袋などは非常に密度が粗い素材です。容積が大きいのでトラック一杯に積んでも空気を運ぶに等しいため、リサイクル会社も引取ってくれません。そこで減容加工が必要となりますが、全てを人力で減容することは到底難しいため、必要に応じて減容機を揃えてきました。現在、当事業所のリサイクル施設では、減容プレス機1台、樹脂粉砕機4台、造粒減容機1台が稼働しています。また、分別についてもトレイなど同形状のものは目視では識別できないことがあります。以前は担当者が樹脂を燃やし発生した煙のにおいで判別をしていましたが、より精度を高めるために近赤外線樹脂識別装置を導入しました。

もう1つ重要なことは現場のマネジメントです。リサイクルは、リサイクル担当者だけの問題ではなく、全員活動として取り組まなければ上手く行きません。特に最初の分別は製造現場で行うので、製造現場の分別意識が重要となります。弊社では、有価資源化することで得た売却益を各製造チームに還元し、反対に産業廃棄物が出た場合には処理費用を請求することで、リサイクルに対する関心が出てきます。産廃処理の場合、処理費用が発生し赤字となりますが、資源として売却すれば黒字になります。今は、製造部門のスタッフにとっても、廃プラスチックの分別は非常に意義のある作業として認識されています。私は、全員活動として取り組めていることが、リサイクルの成果が上がっている大きな要因の1つだと考えています。

Press4:
現地確認は100点満点。引取リードタイムの短縮に期待

Q:そういった中でパンテックとの取引が始まった経緯をお話しください。

「発泡緩衝材を買い取ってもらえるなら…」と商談をスタート。見積価格は期待以上でした。

ほとんどの廃プラスチック類を有価資源化している当事業所においても、景気の波によって、引取ってもらえなくなるものが発生することもあります。2015年5月半ば、パンテックから営業の電話があった時は、発泡緩衝材の売却先を探しているところでした。発泡緩衝材も嵩張る割に重量が軽いため有価資源化が難しい素材です。以前は、なんとか引取ってもらっていましたが、中国市場低迷の影響で、従来の売却先から急に買取を中止され、産廃処理を余儀なくされ困っていました。そのような状況でパンテックからの電話を受けました。

最初に電話をかけてきたのは、営業サポートの方です。発泡緩衝材の買取が出来るなら商談をしたいと伝えると、翌日には営業担当者から連絡があり、サンプルを見て見積もりを出すと言われました。早速、減容加工(粉砕)してサンプルを送ると、期待以上の見積価格が出たため、他の素材も見てもらいました。その結果、多くの種類で従来業者よりも優位性のある価格が出てきました。

 

Q:買取価格以外に、取引をスタートするにあたって評価したポイントがあればお話しください。

現地確認の結果は100点満点。特にトラックの稼働台数が多く、引取リードタイム短縮が期待できました。

弊社では委託先を決める際、現地監査を行っています。パンテックと取引をする際も、回収した廃プラスチックの処理工場とパンテック本社に対する現地監査を行いました。現地監査は弊社規定のチェックシートに基づいて行うのですが、パンテックは100点満点でした。
特に高く評価したのが回収用トラックの稼働台数の多さです。トラックの稼働台数が少ないと、連絡してから回収に来るまでのリードタイムが長引きます。分別保管場所は、保管できる量に限界があります。従来は、連絡してから回収までに数日かかるケースが多いため困っていたこともあり、パンテックと取引することで、そのリードタイムを短縮できると期待しました。

Press5:
最大の成果は廃プラスチックの価値向上

Q:パンテックとの取引を開始して1年ですが、成果はありましたか。

パンテックとの取引が、廃プラスチック類の価値向上に繋がった。会社が儲からなければ仕方がありません。

中国市場急落の影響で廃プラスチック類の価値低下が進行している中、パンテックと取引をすることで価値向上につなげることができました。我々は廃プラスチックを再資源化するにあたり、分別や減容加工を徹底する他、袋詰めするなどして商品価値の向上に努めています。そういう意味では、少しでも価値が上がることは担当者冥利に尽きます。廃プラスチック類の価値が向上すれば、各製造チームに還元できる金額も増えます。金額が増えたことで製造現場で働く社員の環境への意識はますます高まり、良い循環が生まれています。「環境に優しくすれば経営に恩返しができる」と言いましたが、その精度がますます高まっています。やはり会社が儲からなければ意味がありません。

Press6:
迅速な対応を評価

Q:パンテックに対するご評価をお話しください。

対応の迅速性を評価しています。パンテックは、自信を持ってグループ全体にお勧めできる委託先です。

私が最もパンテックを評価しているポイントは、対応の迅速性です。例えば新しい廃プラスチック類が発生した際の新規引き取りに関する問い合わせへの回答は、圧倒的な速さです。他社の場合、こちらが問い合わせたことを忘れるほど長期間に渡って放置されたり、回答がなかったりします。パンテックの場合は翌日には回答をいただけます。引取依頼から実際に回収に来るまでのリードタイムも期待通り短縮できました。

取引を始める前の現地審査の結果は、チェックシートとともに現場を撮影した写真も併せてAIS社本部に報告しましたが、取引スタート後も、ワーキンググループやグループ会社の視察など、ことあるごとに紹介してきました。パンテックは自信を持ってグループ全体に勧めることができる委託先です。

 

Press7:
今後のビジョン

Q:今後のビジョンをお話しください。

基本は廃プラスチックを出さないことですが、現実的には不可能。全員活動としてのリサイクルを継続して行きます。

基本は廃プラスチックを出さないことだと考えていますので、3Rのうちの「Reduse」「Reuse」は追及し続けていきます。
ただし、現実的には廃プラスチックを全く出さないことは無理なので、「Recycle」をやっていくしかありません。従って、これからも社内の意識が緩まないようメッセージを発信しながら全員活動を継続して行きます。

 

Q:パンテックへのご期待があればお話しください。

リサイクルを安定した取り組みにしたい。一緒に取り組んでいただけることを期待します。

どんな企業であれ景気動向に影響を受けています。パンテックも例外ではありませんが、不況の波をかぶった時でも継続的かつ安定的に買取できる体制を確立して欲しいですね。我々はリサイクルを安定した取り組みにしたいと思っています。我々へのリクエストがあれば対応しますので、ぜひ一緒に取り組んでいただけることを期待します。

 

まとめ

・省エネルギーとリサイクルを「見える化」で推進
・最大の成果は廃プラスチックの価値向上
・パンテックの迅速な対応を評価