株式会社プラスティックス様
バーゼル法規制対象アイテムのマテリアルリサイクルスキームを社会福祉法人様との連携により共創
株式会社プラスティックス 様
バーゼル法の改正により規制対象となった保護用フィルム付きのプラスチック端材。同法改正以降、そのままの状態では海外への輸出ができなくなったためにマテリアルリサイクルのハードルが高くなっているこのアイテムのリサイクルスキームを、社会福祉法人 光道園様との連携により共創。
マテリアルリサイクルと障がい者の働きがいの創出を同時に実現するSDGs時代に即した共創イノベーションの具体例をご紹介します。
今や見聞きしない日はないSDGs(持続可能な開発目標)。2015年9月の国連サミットで採択されて以来、世界共通の目標として各国で様々な取り組みが展開されています。株式会社プラスティックス(以下、プラスティックス社)も例外ではなく、プラスチックのリサイクルに関するパートナーとして新たにパンテックを迎え入れ、これまで以上にSDGsに即した「マテリアルリサイクルと障がい者の働きがいの創出を同時に実現するSDGs時代に即したリサイクルスキーム」の運用をスタートさせました。
同社管理部 部長の福嶋氏と小島氏、そして今回のスキーム運用の鍵を握る社会福祉法人 光道園(以下、光道園)の鯖江事業所 障がい者支援施設 ライトワークセンター 主任の近藤氏にこれまでの経緯と成果、そして今後の展望について伺いました。
● プラスティックス社について
プラスティックス社は、1987年にプラスティック板の加工会社からスタートし、現在は、お客様の様々なご要望に迅速かつ丁寧に対応できるよう、製造部門の株式会社プラスティックスと企画デザインを手がける株式会社プレンティで「プラスティックスグループ」を形成し、総合SP提案型企業として事業活動を展開。福井、東京、大阪を拠点とし、プラスチック什器、店舗什器、プラスチック・アクリル製品の加工・製造、導光板、銘板、LED看板などの企画提案から製作までワンストップで手がけている。コロナ禍では、自社の強みを活かしていち早く社会のニーズを捉え、新型コロナウイルス感染防止対策商品をリリース。「飛沫感染防止パーテーション」の累積導入実績は30万台を超えるなど、国内の感染防止の一翼を担う。また、外部デザイナーと立ち上げたインテリアブランド「MOHEIM」では、シンプルで時代に左右されない機能美を備えたプロダクトを次々と生み出し、国内外で好評を博している。
創業:1987年3月、本社:福井県福井市
株式会社プラスティックス様ウェブサイト:http://www.plastics-jp.com/
MOHEIMオフィシャルウェブサイト:https://moheim.com/
● 光道園について
光道園は、1957年に福井県に創設された社会福祉法人で「障がい児・者の支援、高齢者の介護および福祉事業」を展開している。現在、430名を越す職員を擁し、福井県内に鯖江事業所、朝日事業所、朝日1丁目事業所の3拠点を構えるほか、障がい者福祉サービスおよび高齢者福祉サービスを供する施設を多数運営。創設者の「一人ひとりの可能性を信じる」という言葉を大切にしながら、全国で唯一の盲重複障がい専門施設の開設、高齢、児童支援など、その時代のニーズに沿った事業展開を図っている。
創設:1957年10月、本部:福井県鯖江市
社会福祉法人 光道園様ウェブサイト:https://www.kodoen.or.jp/
Press 1 パンテックとの取引開始の経緯
Q1:パンテックとの出会いについて教えて下さい。
A1:10年ほど前にご連絡をいただき、ご商談をさせていただいたのがきっかけです。
福嶋氏 今から10年ほど前に、貴社よりご連絡をいただき、ご商談をさせていただいたのがパンテックとの出会いのきっかけだったと記憶しております。
弊社はアクリルをはじめ、PETやPVC、ABS、PCなど、多種多様なプラスチックの加工に幅広く対応しているのが強みの一つなのですが、加工を行う上では、どうしても端材などのロスが発生してしまいます。当時は今ほどプラスチック廃棄物の海外輸出に関する規制が強くなかったこともあり、多くの企業からプラスチック廃棄物のマテリアルリサイクルのご提案をいただいていたのですが、パンテックもそのうちの一社でした。
その時は、あいにくパンテックとは取引には至らなかったのですが、2021年に10年ぶりにご連絡をいただき、改めてご商談をさせていただくことになりました。
Q2:10年ぶりにご商談させていただく機会をいただけた理由をお聞かせ下さい。
A2:海外のプラスチック廃棄物の輸入規制やバーゼル法の改正など、プラスチックリサイクルを取り巻く社会環境が大きく変わったためです。
小島氏 10年前と比べて、プラスチックリサイクルを取り巻く社会環境は大きく変化しました。釈迦に説法ではありますが、特に2018年1月の中国によるプラスチック廃棄物の輸入規制を皮切りに、ASEAN各国でも同様の規制がさせるようになったこと、そして2021年1月1日からのバーゼル法(正式名称:特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律)の省令改正によりこれまで以上にプラスチック廃棄物の輸出入に関する規制が強まったことで、プラスチック廃棄物の日本国内でのリサイクルのニーズが高まったと感じております。
そうした外部環境の変化を受けてか、弊社にアプローチして来てくださるプラスチックリサイクルの業者も、10年ほど前と比べてかなり少なくなっていました。そんな中でパンテックからご連絡をいただいたため、情報交換も兼ねて、お会いさせていただくことにいたしました。
Q3:プラスチックリサイクルの新たなパートナーとして、パンテックのどこをご評価いただけたのでしょうか。
A3:樹脂や形状に関わらず、弊社が排出するプラスチック廃棄物を一括で引き受けてくださる総合力と国内外に豊富な販売チャネルを有している点です。
福嶋氏 ご商談をさせていただく中で、改めて感じたパンテックの良さというのは、あらゆる樹脂のリサイクルをお任せできるという点です。先述の通り、弊社は多種多様な樹脂の加工を行なっています。それは結果として、多種多様な樹脂の端材を排出してしまうことになります。もちろん弊社としても極力ロスを出さないように努めておりますが、残念ながらそれをなくすことはできません。ですので、リサイクルを請け負ってくれる企業の皆様にリサイクルをお願いするわけなのですが、企業ごとにリサイクルを得意とする樹脂や形状が異なるというのが通例でした。アクリルは引き取れるけど、PVCは引き取れない。板材は引き取れるけど、切粉は引き取れない。そのように企業ごとに制約が多い中で、パンテックは弊社が排出するプラスチック廃棄物のリサイクルを一括でお任せできたので、まずその点が有り難かったです。
また、国内外に豊富な販売チャネルをお持ちである点も、他社にはない魅力だと感じています。外部環境が大きく変化する中で、国内でのリサイクルニーズが高まっていますので、海外だけにしか販路を持っていない企業には、今の社会環境下では、リサイクルをお任せすることは困難だと感じています。パンテックは海外のみならず、国内にも豊富な販売チャネルをお持ちですので、仮に何らかの理由により今のリサイクルスキームの運用が難しくなったとしても、バックアッププランを提示してくれる安心感があり、リスクマネジメントの観点からも評価させていただいております。
Press 2 「社会福祉法人 光道園」との取り組み
Q4:パンテックからご提案させていただいた社会福祉法人様との連携によるリサイクルスキームはいかがでしたでしょうか。
A4: 社会福祉法人様との連携によるリサイクルスキームのご提案は他社にはないもので、障がい者の方々の働きがいの創出にもつながり、単純なマテリアルリサイクルと比べて、プラスアルファの価値を感じました。
小島氏 社会福祉法人様と連携するリサイクルスキームは初めていただいたご提案であったのですが、光道園様からも利用者の方々からも働きがいの創出につながるということで喜んでもらえ、なおかつトレーサビリティを担保できるという点で、通常のマテリアルリサイクルよりもプラスアルファの価値を感じました。
今回、光道園様と連携させていただくことになったスキームの対象アイテムは、アクリルの端材など保護用フィルムが付いている板材で、バーゼル法改正により規制対象となり、そのままでの海外輸出ができません。ただ、パンテックから今回のスキームをご提案いただく以前も、別のリサイクル企業様に有価で買い取っていただくことができており、リサイクルすることができていたので、特段、困っているわけではありませんでした。しかしながら、リサイクル企業様によってどのような加工が施され、リサイクルされていたのかについては、詳細を把握できておりませんでした。
パンテックのご提案は、光道園様にも喜んでもらえる上、これまで課題であったトレーサビリティを担保できるため、従来からの商流を変更するに余りある付加価値があると判断し、採択させていただくことにいたしました。
Q5:これまでの商流を変更された背景には何があったのでしょうか。
A5: 端的に言えば、SDGsの達成への貢献です。
福嶋氏 気候変動問題や海洋プラスチック汚染の問題を前に、サーキュラーエコノミーやカーボンニュートラルへの移行が求められる中、プラスチックを扱う企業として今後の事業展開を図るにあたり、SDGsの達成に貢献することが非常に重要になってきております。
一方で、プラスチックは海洋プラスチック汚染を引き起こしているとしてネガティブなイメージを持たれがちです。弊社は社名がプラスティックスということもあり、プラスチックに対するネガティブなイメージの影響を強く受けていると感じており、このイメージの連鎖を断ち切るためにも、プラスチックがリサイクルできること、資源として循環させられることをもっと発信していきたいと考えておりました。
パンテックからのご提案は、まさに弊社が抱えるそうした課題に対するソリューションだと感じました。プラスチックのマテリアルリサイクルはSDGsの「つくる責任つかう責任」や「気候変動に具体的な対策を」、「海の豊かさを守ろう」、「パートナーシップで目標を達成しよう」など、多くのゴールに関連するものですが、今回のケースでは、光道園様の利用者の皆様に働きがいを創出できているという点で、「働きがいも経済成長も」にも貢献でき、従来よりもマルチベネフィットを生み出せるスキームになっていました。そのため、プラスチックのネガティブなイメージを払拭できるのではないかとの期待があります。
今回のスキームについて、光道園としてはどのように捉えられているのでしょうか。光道園の鯖江事業所 障がい者支援施設 ライトワークセンター 主任の近藤氏に伺いました。
Press 3 「社会福祉法人 光道園」の思い
Q6:パンテックからの依頼をどのように受け止められましたか。
A6:コロナ禍で仕事量が減っていたタイミングでお声がけ頂き、またSDGsに関われることも嬉しく思いました。
社会福祉協議会からのご紹介とのことで、お電話を頂いたのですが、当時はコロナ禍の影響により、仕事量が減っていたタイミングでした。鯖江はメガネの産地ということもあり、メガネの展示会用の箱やお土産用のお菓子の箱を作る箱折の仕事を中心に請け負っていたのですが、コロナ禍の影響により展示会の中止や観光業の停滞などを背景に、仕事量が大きく落ち込んでいました。そんな中で今回のお話をいただけたので、タイミングとして非常に良く、まさに渡りに船という感じでした。
障がい者支援施設の利用者数は1施設あたり、30-40名というのが一般的なのですが、光道園は90名ほどの方が利用されており、利用者数が多いという特徴があります。加えて、ここは視覚に障害があり、かつ身体に障害があったり知的発達に遅れがあるという2つの障害を抱えていらっしゃる盲重障害の方が多く利用されている施設です。そうした状況のため慢性的に仕事量を確保するのが難しいという課題がありました。それに追い討ちをかけるようにコロナ禍の影響を受けました。光道園は「働く施設」としてスタートしているため、仕事が確保できないという状況に非常に困っていたので、今回のお話は有り難くお受けさせていただきました。仕事内容も仕事量も光道園の利用者の皆さんにマッチしており、大変満足しております。
またこのようにプラスチックのリサイクルに関わらせていただくことで、SDGsに貢献できることも嬉しく思いました。プラスチック廃棄物の問題は社会的にも関心の高いテーマですし、このようにリサイクルの一端を担うことができるのは、利用者の皆さんにとっても仕事に取り組む良い動機付けになっているのではないでしょうか。今回の件は、私たち光道園や利用者の皆さんはもちろん、プラスティックス様やパンテックといった関係者だけでなく、社会的にも意義のある取り組みで、まさに「三方良し」を体現するようなスキームだと思います。
Q7:保護フィルムの剥離作業に対して、利用者の皆様はどのように取り組まれているのでしょうか。
A7:アクリルの板材から保護フィルムをビリビリ剥がす感覚が楽しいようで、テスト段階から意欲的に取り組んでいただいております。
今回いただいたお仕事が板材から保護フィルムを剥離する作業なのですが、利用者の皆さんはテストで少量をさせていただいた時から、非常に楽しんで取り組まれています。保護フィルムをビリビリ剥がす感覚というのが楽しいようで、テスト終了後には「早くこの仕事がやりたい」と催促されるほどでした。
当初は目が見える利用者の方の方が得意な仕事かと思っていたのですが、実際には目が見えない人の方が器用に作業をされています。目が見えるとどうしても視力に頼ってしまって板材とフィルムの境目がなかなか見つけられないようなのですが、目の見えない方は指の感覚が研ぎすまされているので、すごく上手に作業を進められています。ですので、目の見える方には比較的剥離がしやすいものをお任せするなど、利用者の特性に合わせて、仕事の分配を行なっています。
Q9:今後、パンテックに期待することはありますか。
A9:利用者の皆さんが継続的に取り組める仕事をいただけると嬉しいです。また全国的に障がい者支援施設はコロナ禍で仕事を減らしていますので、今後、このような取り組みを全国で水平展開していただくことを期待しています。
冒頭でもお伝えしましたが、ここは施設の特性もあり、仕事の確保が難しいところがあるので、今回のご提案は仕事内容と仕事量の両面から、非常に有り難かったと感じています。今後も利用者の皆さんが継続的に取り組める仕事をいただけると嬉しいです。
また、全国的に障がい者支援施設はコロナ禍で仕事を減らしていますので、今後、このような取り組みを全国で水平展開していただけることを期待しています。今回の取り組みは、プラスチックの資源循環も促進されますし、障がい者支援施設にも仕事生まれるということで、SDGsの観点からもすごく良い取り組みだと思いますので、ぜひ全国に広めていただきたいと思います。
最後に、光道園と同様に、プラスティックス社のお二方にもパンテックに期待することをお伺いしました。
Press 4 サーキュラーエコノミーの実現に向けて
Q10:今後、パンテックに期待することはありますか。
A10:プラスチックの資源循環に関する情報をご提供いただきたいですし、弊社が販売した使用済みの「飛沫感染防止パーテーション」のリサイクルについても、今後、お知見をお借りできれば嬉しいです。
福嶋氏 今後、弊社としてもプラスチックの資源循環をさらに推進していかなくてはならないと考えており、マテリアルリサイクル率の向上やクローズドループの構築、再生原料への切り替えなどについても検討していく必要があると認識しております。パンテックは日々の業務を通じて、プラスチックのリサイクルについての最新情報を常にお持ちだと思いますので、そうした情報を共有いただけると嬉しいですね。特に弊社が排出しているアクリルなどの端材が、再生原料化された後に国内外でどのように利用されているのかなどについては非常に興味があります。そうした先行事例が新しい取り組みのアイデアにつながると思いますので、ご教示いただけると助かります。
小島氏 弊社はコロナ禍で「飛沫感染防止パーテーション」など、新型コロナウイルス感染防止対策商品を多数導入させていただいております。「飛沫感染防止パーテーション」については、累計の導入実績が30万台を超えているのですが、今後、新型コロナウイルス感染症が終息した場合、それらが廃棄されることになるかと思います。もちろん市場には他社製品も多数投入されておりますので、回収の面などで課題はあるかと思うのですが、それらを有効にリサイクルしていくにあたって、パンテックのご知見をお借りできれば嬉しいです。
弊社がプラスチックの資源循環を進めていくにあたっての良きパートナーとして、今後とも末長くお付き合いできればと考えております。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。