株式会社ファンケル様
使用済みの化粧品容器を店頭回収し植木鉢に 「FANCL リサイクルプログラム」
サステナビリティ推進室
今道 喜美 様
事例の概要
「美」と「健康」事業を中心に、世の中の不安や不便といった「不」の解消に取り組む株式会社ファンケル。プラスチック資源循環法の施行を一つの契機として、多くの企業が環境対応を急いでいますが、同社ではそうした動きに先駆けて、2021年7月より一部の直営店でPET製の使用済み化粧品容器を店頭回収し植木鉢などにリサイクルする「FANCL リサイクルプログラム」を開始。2023年には店頭回収を全国のすべての直営店舗に広げるなど、化粧品業界における環境活動のロールモデルとして取り組みを成長・拡大させ、業界を牽引されています。
容器のリサイクルに対して、20年以上前から構想を持たれていた同社が、満を持してスタートさせた本プログラムについて、これまでの経緯と実現に至るまでの道のりについて伺いました。
※ 本記事の掲載内容は全て取材当日時点の情報となります。
- お客様からの使用済みの化粧品容器を回収するスキームを構築するため、リサイクルや廃棄物関連の法律に関する高度な専門知識を必要としていた
- 回収した化粧品容器を価値のある製品にリサイクルできる会社が見つからなかった
- 回収から製品化に至る全ての工程で的確なアドバイスが得られ、プロジェクトをスタートさせることができた
- 回収した化粧品容器を寄贈先やお客様からも好評な製品にリサイクルすることができた
1. 「FANCL リサイクルプログラム」発足の背景と経緯
― 「FANCL リサイクルプログラム」の開始前にも貴社ではリサイクルの取り組みはされていたのでしょうか?
実は、20年以上前から使用済みの化粧品容器を回収してリサイクルすることについて、社内で模索していました。
発端はお客様から「使い終わった容器を回収してほしい」というご要望をたくさんいただいたことです。弊社の商品は防腐剤などの添加物が一切入っていないので、新鮮なまま使い切れるように小さな容器に入っている商品が多くあります。そのため商品を使い終わるまでの期間が短く、どうしても容器を捨てる頻度が高くなってしまうことから、容器の回収とリサイクルについて多くのお客様からご要望が寄せられていました。
そのお声を受けて、社内でも使用済み化粧品容器をなんとか回収してリサイクルできないか、何度も検討を重ねましたが、結局いつもコスト面や運用面の課題を乗り越えられず、実行には至りませんでした。
ただ、近年は地球温暖化などの環境問題を背景に、企業の社会的な責任やメーカーとしての生産者責任が強く問われるようになってきたことで、本腰を入れて取り組む経営判断をしたことが本プログラム発足の流れになります。
― プログラムの立ち上げの際、どのような課題があったのでしょうか。
本プログラムを構想している段階で2つ大きな課題がありました。ひとつはどのようにお客様から使用済み化粧品容器を回収すればいいのかということです。
使用済み化粧品容器をリサイクルするにあたっては、容器を有価物として回収するスキームの構築を目指しましたが、本プログラムのような取り組みは業界を見渡してみても前例が少なく、弊社にも知見がありませんでした。ですので、取り組みをはじめるにあたって、法律面で何に気をつけ、どのような対策を講じる必要があるのかを把握する必要がありました。
もうひとつの課題としては、回収した容器を価値のある製品にリサイクルできるかということです。
これはとても難しい課題でした。そもそも使用済みの化粧品容器を再生原料に加工して、それを使って製品を製造してくれる企業がなかなか見つからなかったからです。社内でも色々とリサーチはしましたが、調べれば調べるほど、回収から製品化までを一貫してサポートしてくれる企業がないということが分かりました。
再生原料に加工することと再生原料を使って製品をつくることは全く別のフェーズであり、請け負う企業もそれぞれ異なる。その上、使用済みの化粧品容器はこれまでリサイクルされてこなかったある意味で特殊なアイテムです。また弊社の容器は小さいので、回収量もそこまで多くないことが考えられましたし、小ロットでの加工を請けてくれるとなると、ほとんど選択肢がありませんでした。
2. パンテックをリサイクルパートナーに選んだきっかけ
― パンテックを知ったきっかけと選んでいただいた決め手を教えていただけますか。
当初、弊社にはプラスチックのリサイクルに関する高度な専門知識がほとんどありませんでしたので、先ほど申し上げた2つの課題を克服するためには、コンプライアンスの観点からアドバイスをいただけ、尚且つ回収から製品化までトータルでサポートしてくれるリサイクルパートナーの協力が必要でした。
そんな中、資源循環をテーマにした展示会に訪れた際に初めてパンテックさんを知り、まさに私たちが求めていたリサイクルパートナー像にぴったり当てはまっていたので非常に魅力的に感じました。
パンテックさんと出会う前には再生原料化や製品化における加工について多くの企業に本プログラムの協力を打診しておりましたが、化粧品の容器というのがリサイクルの前例がないアイテムであることや小ロットであることを理由にお断りされていたので、パンテックさんは弊社の規模に寄り添って、伴走していただけたことが大変心強かったです。
― パンテックが関わることでプログラムは順調に進みだしたのでしょうか?
パンテックさんにご相談させていただいてからは順調に進められたと感じています。
回収や加工などあらゆる段階でアドバイスをいただけたことはもちろんですが、なんといっても使用済み化粧品ボトルを植木鉢にしていただけたことが「ありがたい」の一言です。
またプログラム開始後、店頭回収を全国の直営店に広げていく際にも助けていただきました。本プログラムを全国展開するにあたり、直営店舗が所在している100を超える自治体に連絡をとり、自社での容器回収についてご理解を得られるよう説明しましたが、本プログラムについての捉え方が自治体によって異なるケースもあり、全国展開が難航することもありました。そうしたときにパンテックさんにアドバイスをいただくことができ、結果的にすべての自治体様のご理解を得ることができました。
パンテックさんと出会っていなければプログラム自体、計画倒れになっていたかもしれませんので、パンテックさんは弊社にとって救世主のような存在だと思っています!
―パンテックが貴社に貢献できた点や、ユニークネスだと感じられる部分があればお聞かせください。
製品づくりについては先ほど申し上げたとおり大変貢献していただきました。
最終製品の植木鉢については、現在は非売品なのですが、寄贈先やお客様から「売っていないの?」と聞かれるほど好評をいただいています。
あとは、やはり前例がないリサイクルプログラムを進行しなければならないときに、パンテックさんに寄り添っていただけたことは非常に大きかったと感じています。
段階ごとに数多くのアドバイスをいただきながら進行してきましたが、パンテックさんの助けがあったからこそ、プログラムをここまで大きくすることができたと感じています。
ユニークネスと感じる部分については、プラスチックリサイクルをトータルでプロデュースしてくださるところです。
プラスチックリサイクルの業界では専門分野が細分化していることが多いと感じます。再生原料化と製品化を両方やっている企業はほとんどありませんし、加工はできても対応できる樹脂の種類が限定されていたり、法律関係がわからなかったり、大量生産は得意でも小ロットの対応が難しかったり、各社で強み弱みはさまざまです。ただ、私たちのような業界外の企業にとって、リサイクラーさんや製造事業者さんの強みや弱みを把握した上で加工を委託することはかなりハードルが高いと感じます。
例えば「再生原料化」と「製品化」をそれぞれの別の企業に相談するとなるとどうしても効率が悪くなってしまいますし、そもそも対応してくれる企業を見つけるのにも一苦労します。それを一社に最初から最後まですべてサポートしていただけるのは効率面でもとてもよかったと思っています。
パンテックさんはプラスチックリサイクルに関して、回収から製品化に至るリサイクルスキーム全体に渡って高い専門知識と広いネットワークを保有されていて、私たちに必要なサポートをしてくださっています。パンテックさんのようにリサイクルスキーム全体をプロデュースしていただける企業はなかなかありません。
3. 「FANCL リサイクルプログラム」の反応
― 「FANCL リサイクルプログラム」がスタートして、お客様や社内の反応はいかがでしたか?
リサイクルプログラムを始めた際は、お客様から「待っていました!」というお声をたくさんいただきました。私たちも20年以上前からご要望をいただいていたことにようやく応えることができ、悲願が叶った想いです。
社内でも従業員が「ファンケルが業界に先駆けてリサイクルプログラムをやっている」ということに誇りを感じており、また、ボトルの分解・洗浄・乾燥・粉砕作業を担当している特例子会社ファンケルスマイルの障がいのある従業員からも「このプログラムに参加できてうれしい」との声が上がっており、インナーブランディングにも効果があったように思います。
また直営店舗のスタッフも積極的にお客様へリサイクルプログラムの説明をして参加を促してくれていますし、通販部門もお客様を実店舗へ誘導してプログラムに参加していただくための施策を企画・実行しており、単なる環境活動に留まらない取り組みに発展してきております。
そうした直営店舗スタッフと通販部門の尽力もあり、プログラムへ参加してくださるお客様はどんどん増えておりまして、2023年度末時点では約45,000人のお客様に参加いただいている状況です。そして、容器回収にご参加いただいているお客様のご来店頻度とご購入単価が上がり、直営店舗の売上にも貢献しています。
さらに、弊社の目標といたしましてはより多くのお客様に参加いただけるよう目指しておりますので、今後も本プログラムにお客様が参加いただくための施策を継続的に検討していきます。
4. 今後の展望
― 「FANCL リサイクルプログラム」の今後の展望をお聞かせください。
プラスチックの資源循環を進めていくためには一人ひとりの環境意識がとても重要だと考えていますので、このプログラムを社会の環境意識を変える契機にできればと思っています。
また、今後は容器を回収するだけでなくお客様にも楽しんでいただけるプログラムにしていきたいので、植木鉢以外にもお客様にとって魅力的な製品をつくっていきたいと考えています。そうすることでさらに多くのお客様にプログラムに参加していただけるとも考えています。また回収した容器をそのまま容器にリサイクルする「水平リサイクル」も同時に目指しており、プラスチックが循環する社会づくりに貢献していきたいと思います。
― 最後に、パンテックに期待することをお聞かせください。
最終製品の植木鉢に関しては、「売ってほしい」というお声をたくさんいただいているのですが、商品として販売するにはもう少し品質面での向上を目指していきたいと感じています。使用済み化粧品容器由来の再生原料を用いたものづくりは、前例があまりありませんので、難しいことは重々承知しているのですが、植木鉢以外のバリエーションも含めて、商品として販売できるアイテムを次々とプロデュースしていただけるとうれしいです!
真の資源循環を目指すためには、継続的なリサイクルをすることが大事だと考えていますので、国内外のプラスチックが完全に循環できるような仕組みづくりを今後パンテックさんに構築していただけることを期待しております!