2018.06.19

PEプラスチックスクラップのリサイクル動向【国内編】

中国の環境政策後、ASEAN諸国が世界のプラスチックの受け皿となり、輸入国の多くで通関事情に大きな変化がみられる。中国というとてつもなく大きなプラスチックスクラップ市場を失ったいま、世界の国々では自国完結型のリサイクルフロー構築へ取り組みが強化されている。

 

アメリカでは、およそ3分の1の州で、廃棄物処理に問題を抱えており、ショッピングバッグなどを1回使用で使い捨てず、何度も再利用する動きが起きている。また、EUでは2030年までにプラスチック包装類の100%再利用を目標に掲げている。自国で排出した廃棄物は自国で処理を行う「自国完結型の循環リサイクル」がトレンドとなっており、それらの動きは今後より一層強まっていくだろう。

世界のリサイクル産業の構造が変革を遂げつつある中、今回のブログでは日本国内でのPEプラスチックのリサイクルトレンドや弊社での取り組み事例を紹介する。

国内循環型リサイクルへの着手

2017年、中国政府が発令した『国門利剣』の環境政策が敷かれる以前より、弊社の海外営業チームでは環境規制に関する情報をいち早く入手し、海外でのプラスチックリサイクルだけでなく、日本国内でのリサイクルルートの拡大に着手してきた。もともと、ポストコンシューマー材(一度市場に出荷された使用済みの製品を回収し、再生した材料)の中には、品質の高い素材や分別などの加工を行うことで、商品の付加価値を高めて販売している商材もあった。しかし、日本のエンドユーザーが原料供給側に求める水準は高く、原料の物性や品質維持、安定供給などの様々な条件に応えることは容易ではない。そのため、サプライヤーとバイヤーとのマッチングが図れない場合が多々あった。そんな難しい状況ではありながらも、弊社ではPEプラスチック原料に着目し、比較的綺麗で高品質なスクラップ材の国内でのリサイクル循環ができないかを考え始めた。

PEフィルム(ポリエチレンフィルム)は、日常生活ではポリ袋や梱包資材として、食品業界では食品の包装材料、物流業界ではストレッチフィルムなどの荷崩れ防止用フィルムとして様々な用途で使用されている。弊社が回収したPEフィルムから原料化した再生材を使用し製品化することを検討していた際、2016年に再生ごみ袋の製品化技術を持った協力企業との出会いがあり、PEフィルムのプラスチックの国内循環型リサイクルの取り組みがスタートした。

PEは、主にHDPEとLDPEに分別される。HDPE(高密度ポリエチレン)とLDPE(低密度ポリエチレン)では、用途の異なる製品に使用されるため、分別が必要となる。製品にした際の性質や物性が異なれば、製品の品質に大きく関わってくるため、ポストコンシューマー材を原料として使用する際は安定した品質の原料を使用しなくてはならない。そのため、ポストコンシューマー材を回収する弊社では、プラスチックスクラップを排出される企業様に対して、プラスチックの種類ごとでの分別の徹底、色目(透明色、乳白色、雑色など)の分別、異樹脂・異物の混入がないかどうか、協力をいただいた上でご出荷をいただいている。

回収基準

1)減容加工済みのストレッチフィルム、ポリ袋
2)ラベルなどの異物が混入していないもの
3)PE以外の異樹脂(PPやPET樹脂)が混入していないもの
4)色目の分別が済んでいるもの
5)発生量や引取り条件によっては、未圧縮品でも提案可能(協力会社での加工、パッカー車での回収により取扱い可能)

これらの分別基準や品質基準を満たした企業との国内循環型リサイクルの取り組みが次々と進んでいる。2017年6月から取り組みがスタートした大手飲料メーカー様との取引を皮切りに、化粧品メーカー様、航空会社様、ホームセンター様など各上場企業との取引に至っている。回収したPEフィルムを原料化した後、工場内で排出される廃棄物を入れるごみ袋として再生ポリ袋の使用など社内リターンに貢献している。

「排出者責任」を全うする

国内循環型リサイクルのメリットとして、
① 取引価格優先ではなく、安定的かつ継続した商流の確立
② プラスチック資源の発生から最終製品に生まれ変わるまでのリサイクルフローの可視化(商流の見える化)
などが挙げられるが、それだけでなく「企業の社会的責任」としての意義を大きく果たしているともいえる。国内循環型のリサイクルや自社から排出された廃棄物の再製品化が進む背景を紐解いていくと、日本企業の環境意識の高さや自社製品の製造におけるプライドが垣間見える。社会的責任(CSR活動)を果たす取り組みが高い次元で進められており、製品製造における環境への配慮、環境意識が非常に高い。また、製造業だけでなく、プラスチックを排出するすべての企業には、「排出者責任」があると考えられており、企業の利益を追求するためだけでなく、環境への軽減負荷を常に考えていかねばならない。

某大手製造業の環境部門担当者は、「廃棄物であったとしても、自社から出るものであれば爪の垢まで自社ブランドである、という矜持(プライド)があります」という信念があることを教えてくれた。

このことから、環境部門の担当者は企業の売上以上に、環境側面における企業貢献に着目し、企業活動を行っている。生産や廃棄、消費に伴って発生する破棄物をゼロにすることを目的とする取り組み「ゼロエミッション」の方針に対する考えが行動規範となっている企業も数多い。こうした経済発展とともに、環境保全の側面でも貢献を行うことが企業の果たすべき役割だと考えている。

大手飲料メーカー様の工場内で使用されている再生材を使ったごみ袋

機密情報が含まれるプラスチックスクラップを取り扱う以上、廃棄される材料にも機密情報が多く含まれており、間違った処分を行うことで、機密情報の漏洩による企業の損失は計り知れない。すべてのリサイクル業者が安心した透明性のある適切なリサイクル処理を行うとは限らず、海の向こう側でどのようなリサイクル処理がなされているかを実際に目にすることは難しい。また、「排出者責任」は廃棄物を処理した後も常に付きまとう課題であり、廃棄物を処分した現地企業ではなく、廃棄物を排出した企業自体が責任を問われることとなる。

企業にとって、リサイクル会社との取引がリスクとなってはいけない。プラスチック製品メーカー様やプラスチックリサイクルに携わる企業様にとって、リサイクルを行うパートナー選びが最も重要であると言っても過言ではない。プラスチックの廃材と言えど、それぞれの企業独自の技術が含まれた素材であることには変わりがない。そのような機密情報の漏洩リスクに対策を講じる企業の多くは、取引の透明性や売却したプラスチックスクラップの国内循環への関心が高いとされる。

パンテックにできること

◆ポリエチレンフィルム端材の国内リサイクルフロー構築
◆再生ごみ袋などのフィルム製品の開発・販売

中国の国⾨利剣による環境政策施行開始から5か月が経過した今、有価物として取り扱えず再び産業廃棄物となっている素材も多いことと思います。弊社では、有価物としての再評価や既存の商流の課題の洗い出し、リスク管理評価などを長期的な目線でプロデュースさせていただきます。製造工場様だけでなく、産業廃棄物企業様や古紙リサイクル企業様に対しても安定的で透明性の高い国内循環型リサイクルの提案が可能です。

今後より一層、ASEAN地域へのコンテナが集中し副次発生的に流通が不安定化することが予想されます。国内流通が可能なリサイクル資源は、早めの国内完結型のフロー構築を目指し、真に持続可能なシステムを立ち上げることの一躍を弊社に担わせていただきたいと願っております。

まとめ

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