2022.03.11

5分で解説する「プラスチック資源循環促進法」第1回〜設計・製造〜

 いよいよ2022年4月1日より「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(プラスチック資源循環促進法)が施行されます。この法律の施行によって、プラスチック製品のライフサイクル(設計・製造・販売・提供・排出・回収・リサイクル)に関わる事業者や市区町村は、これまで以上にプラスチックの資源循環に向けた取り組みが求められることになります。

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施行が目前に迫る中、改めてこの“プラ新法”により、何がどう変わり、どのような対応を講じる必要があるのか。長年、プラスチックのマテリアルリサイクルを事業として展開してきた観点で、3回に分けて、分かりやすく解説いたします。
また環境省が「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」の普及啓発のための特設ページを公開し、本法律に関するオフィシャルな情報を集約・発信していますので、そちらも合わせてご確認下さい。

 第1回目はプラスチック製品の「設計・製造」のフェーズに焦点を絞り、プラ新法について解説いたします。
「設計・製造」のフェーズは、プラスチック製品のライフサイクル上、川上に位置します。プラスチックの資源循環を促していくためには、この段階から川下(排出・回収・リサイクル)のことまでを考えて、資源として循環させることを念頭に置いた製品設計を行うことが極めて重要です。
プラ新法の施行により、プラスチック製品の設計・製造を行う事業者には、こうした資源循環を想定したプロダクトやサービスのデザインのあり方、いわゆる「サーキュラーデザイン」を取り入れることが要請されることになります。

img-01 出典:経済産業省 環境省「プラスチックに係る資源循環の 促進等に関する法律について

 プラ新法の中では、「プラスチック使用製品設計指針」として、プラスチック製品の設計・製造を行う事業者が取り組むべき/配慮すべき6つポイントを挙げています。詳細については上述の環境省の特設ページに譲りますが、この中で特に留意すべきは、「(1)構造」、「(2)材料」、そして「(6)製品分野ごとの設計の標準化や設計のガイドライン等の策定及び遵守」です。

img-02出典:経済産業省 環境省「プラスチックに係わる資源循環の促進等に関する法律について

(1)構造

 プラスチックの資源循環を促進するための「(1)構造」としては、次の8つを考慮することが求められます。

img-05-1出典:経済産業省 環境省「プラスチックに係わる資源循環の促進等に関する法律について

2019年に策定された「プラスチック資源循環戦略」では、基本原則として「3R+Renewable(再生可能資源への代替)」が掲げられましたが、「(1)構造」に関して言えば、Reduce(減らす)、Reuse(繰り返し使う)、Recycle(リサイクル)の「3R」に則した内容になっていることが分かります。
中でも「⑤単一素材化など」は、マテリアルリサイクルを行う上では、非常に有効です。プラスチック製品の安全性や機能性を高めるために複数の異なる樹脂を多層/複合することは多いですが、それらの製品は機能性が高まる一方で、樹脂毎に分解・分別することが容易ではなく、マテリアルリサイクルの難易度を高めてしまっています。結果的にマテリアルリサイクルができずに、サーマルリサイクルや埋立・焼却されるケースが多いのが現状です。そのため、単一素材化(モノマテリアル化)は、資源として循環させることを促進するためには、有効な手立てのひとつであると言えます。
もちろん安全性や機能性を担保するために、多層/複合素材を選択することが適当である製品もありますので、製品特性に応じた構造設計を行うべきであることは言うまでもありません。

(2)材料

「(2)材料」としては、次の4つのポイントを考慮することが求められます。

img-06-1出典:経済産業省 環境省「プラスチックに係わる資源循環の促進等に関する法律について

「(1)構造」が「3R」に則した内容になっているのに対し、「(2)材料」は、「Renewable(再生可能資源への代替)」に重点が置かれています。
「①プラスチック以外の素材への代替」は、紙やガラス、金属などの代替素材への切り替えを促すものですが、これは製品のライフサイクル全体(資源採取から製品生産、廃棄・リサイクルまでの全ての工程)の環境負荷を検討した上で、総合的に判断をする必要があります。場合によっては、代替素材に切り替えるよりも、プラスチック製品を使用する方が環境負荷を低減できるケースもありますので注意が必要です。
また「③再生プラスチックの利用」「④バイオプラスチックの利用」に関しては、供給量や品質、価格などの点でまだまだ課題もありますが、プラスチックの資源循環という観点では、「③再生プラスチックの利用」を促すことが、プラスチック資源の循環利用先の確保にもなるため、とりわけ重要な意味を持ちます。プラスチック資源を回収し、再生原料化しても、その利用先がなければ資源として循環することにはならないからです。
これまで日本で製造された再生プラスチック原料は、海外に輸出され、使用されるケースが大半を占めていましたが、国内のプラスチック製造事業者等が「③再生プラスチックの利用」を積極的に行えば、それが国内のプラスチック資源循環促進に直結することになるため、再生プラスチックの国内市場の拡大がプラスチックの資源循環において、大きな鍵を握ることになります。
現在、再生プラスチックは土木や建築、輸送資材等の原料として用いられることが多いものの、今後はより付加価値が高く、そして市場ニーズが高い製品への採用が加速していくことが見込まれます。
なお私たちパンテックは再生プラスチックの供給に関しては、日本有数の実績を有しておりますので、「再生プラスチックの利用」に取り組みたい事業者様はお気軽に弊社にお問い合わせください。

(6)製品分野ごとの設計の標準化や設計のガイドライン等の策定及び遵守

 これまでにも業界団体等において、プラスチックの資源循環を促すために、製品分野ごとの設計の標準化やガイドライン等の策定が行われてきましたが、より一層の資源循環を図るには、こうした取り組みを拡大し、当該ガイドライン等を遵守するよう努めることが望まれます。
 特にこれまでサーマルリサイクルや埋立・焼却処分されてきた使用済みのプラスチック製品を効率的に回収し、環境負荷が最も低いマテリアルリサイクルを推進していくためには、設計・仕様の標準化が不可欠と言えます。
社会全体としてプラスチックの資源循環を促進していくためには、個社ごとの取り組みでは限界があります。設計の標準化や設計のガイドライン等の策定には、業界を同じくする各社が知見を持ち寄り、意見を擦り合わせる必要があるため、相当な労力を擁しますが、リサイクル率が高いペットボトルを例にすると明らかなように、その効果は絶大と言えるのではないでしょうか。
 今回のプラ新法の中で示された「プラスチック使用製品設計指針」は、全てのプラスチック使用製品の設計・製造事業者が取り組むべき事項を定めたものになり、プラスチック製品に携わるものにとっては自分ごととして取り組む必要があります。
環境問題が深刻化する中、事業がサステナブルであるかどうかが、企業の存続を左右する大きな要因の一つとなっています。世界的なESG投資額の拡大やSDGsに関する取組みの浸透などは、その端緒と言えるでしょう。
今後、ブランドオーナーでは環境負荷の低い製品を調達する「グリーン調達」がますます推進され、生活者においても環境に配慮された商品を購買する「サステナブル消費」が拡大していくことが予想されます。
今回、特に優れた設計指針を国が認定する制度が創設され、認定製品については国が率先して調達する(グリーン購入法の配慮)などのインセンティブが設けられることが公表されておりますが、新法を法令遵守(コンプライアンス)の観点だけで捉えるのではなく、GX(グリーントランスフォーメーション)の契機することが、地球の持続可能性だけではなく、事業の持続可能性を高めることにつながるのではないでしょうか。

第2回目は【5分で解説する「プラスチック資源循環促進法」〜販売・提供〜】です。

まとめ

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