いよいよ2022年4月1日より「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(プラスチック資源循環促進法)が施行されます。この法律の施行によって、プラスチック製品のライフサイクル(設計・製造・販売・提供・排出・回収・リサイクル)に関わる事業者や市区町村は、これまで以上にプラスチックの資源循環に向けた取り組みが求められることになります。
施行が目前に迫る中、改めてこの“プラ新法”により、何がどう変わり、どのような対応を講じる必要があるのか。長年、プラスチックのマテリアルリサイクルを事業として展開してきた観点で、3回に分けて、分かりやすく解説いたします。また環境省が「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」の普及啓発のための特設ページを公開し、本法律に関するオフィシャルな情報を集約・発信していますので、そちらも合わせてご確認下さい。
第2回目はプラスチック製品の「販売・提供」のフェーズに焦点を絞り、プラ新法について解説いたします。
出典:経済産業省 環境省「プラスチックに係る資源循環の 促進等に関する法律について」
「販売・提供」のフェーズでは、使い捨て(シングルユース/ワンウェイユース)プラスチックの使用規制・削減に重点が置かれています。今回のプラ新法の施行により、特定のプラスチック使用製品の使用の合理化が対象事業者に求められるようになります。日本では、「プラスチック資源循環戦略」のマイルストーンとして、2030年までにワンウェイのプラスチックを累積25%排出抑制することを目指しており、先行して2020年7月1日よりプラスチック製の買物袋(以下、レジ袋)が有料化されましたが、その流れを汲んでいるものと言えるでしょう。
今回のプラ新法で特定プラスチック使用製品として指定されたのは、商品の販売やサービスの提供に付随して消費者に無償で提供される以下の12製品です。対象製品に応じて対象業種も明示されておりますので下表をご確認ください。
出典:経済産業省 環境省「プラスチックに係る資源循環の 促進等に関する法律について」
なお、主たる事業が上記の対象業種に該当しない場合であっても、事業活動の一部で上記の対象業種に属する事業を行っているのであれば、その事業の範囲で対象となります。
プラ新法では上記12製品が「特定プラスチック使用製品」として定められましたが、これらを提供する事業者には、提供量の多寡を問わず、特定プラスチック使用製品の使用合理化に取り組んでいくことが求められます。とりわけ、前年度において特定プラスチック使用製品の提供量が5トン以上の事業者については、「特定プラスチック使用製品多量提供事業者」となり、「使用の合理化」の取り組みが判断基準に照らして著しく不十分と認められる場合には、勧告・公表・命令の対象となり、命令を無視した場合には「50万円以下の罰金」の対象となりますので注意が必要です。
出典:経済産業省 環境省「プラスチックに係る資源循環の 促進等に関する法律について」
対象事業者の中には自社がどれほどの「特定プラスチック使用製品」を提供しているのか、重量ベースで把握されていない事業者もいるかもしれませんが、今後はそうはいきません。特定プラスチック使用製品の提供事業者には、対象製品を提供した量や合理化のために実施した取り組み内容、その効果などを公表するよう努めることが求められるからです。左記内容を国に報告する義務はありませんが、自社のウェブサイトやIR関連資料などで主体的に公表する必要があるということも理解しておくべきポイントの1つと言えるでしょう。
また、提供量は、事業所単位ではなく、事業者単位での計算となります。そのため、全国展開されているような事業者の場合には、各店舗/拠点の特定プラスチック使用製品の提供量を合算して計算する必要があります。加えて、フランチャイズ事業で、約款に特定プラスチック使用製品の使用の合理化に関する定めを含む場合、加盟者の提供量は本部事業者に含めて計算すると定められています。もちろん、法人格が異なる場合には、グループ会社等で合算する必要はありません。
では、対象業種に属する事業者が具体的にどのような対策を行う必要があるのでしょうか。プラ新法の中で特定プラスチック使用製品提供事業者が取り組むべき事項として定められた判断基準は以下9つです。
この判断基準については関わる全てを考慮する必要がありますが、ここでは特に押さえておかなくてはならない「(2)特定プラスチック使用製品の使用の合理化」を取り上げたいと思います。
特定プラスチック使用製品の使用の合理化のための取り組みには、大きく「提供方法の工夫」と「製品の工夫」の2つがあります。
「提供方法の工夫」により消費者によるプラスチック使用製品の排出抑制が促進されることが期待されています。レジ袋の有料化が義務付けられ際には、1年足らずで大手コンビニでのレジ袋の辞退率は70%以上となり、有料化導入前の3倍程度にまで急増しました。同時にマイバッグが一気に普及したことは周知の事実です。同じように、今後、対象製品の辞退率が高まり、それに代わるマイアイテムを使用する人が増えるかもしれません。
「製品の工夫」として掲げられている項目については、提供事業者が特定プラスチック使用製品を調達する際の、製品選定のポイントにもなると言えるでしょう。ここで例示されているような視点で提供製品を選定することで、プラスチック使用製品の過剰な提供を抑制することができ、結果的に消費者によるプラスチック使用製品の排出抑制につながります。
特定プラスチック使用製品を製造するメーカーにとっては、上記の視点を踏まえた製品開発を行うことで、提供事業者に採用してもらえるチャンスが拡大することになります。もちろん、製品開発に際しては、第1回目の記事に記載している設計指針を踏まえることも必要です。
欧州ではすでにカトラリー類やストロー、発泡スチロール製食品容器などの使い捨てプラスチック製品の販売を禁止されています。それに対して、今回のプラ新法で謳われているのは禁止ではなく、あくまで使用の合理化です。そう考えると、諸外国の動きに比して日本の対応は緩やかなものであると捉えられるのではないでしょうか。
現状、特定プラスチック使用製品の対象製品の拡大や販売禁止などについては想定されておりませんが、諸外国で使い捨て(シングルユース/ワンウェイユース)プラスチックの生産・販売禁止措置が加速した場合、国際社会の一員として、日本も対応を迫られることは十分考えられる事態です。環境問題は日本の問題ではなく、世界の問題です。そのため、環境対策は日本国内の動きに対応するだけではなく、世界の動きに合わせて、先手で能動的な対応を検討していく必要があると言えるでしょう。
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第3回目は【5分で解説する「プラスチック資源循環促進法」〜排出・回収・リサイクル〜】です。
まとめ
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