2022.03.31

5分で解説する「プラスチック資源循環促進法」第3回〜排出・回収・リサイクル〜


 いよいよ2022年4月1日より「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(プラスチック資源循環促進法)が施行されます。この法律の施行によって、プラスチック製品のライフサイクル(設計・製造・販売・提供・排出・回収・リサイクル)に関わる事業者や市区町村は、これまで以上にプラスチックの資源循環に向けた取り組みが求められることになります。
 施行が目前に迫る中、改めてこの“プラ新法”により、何がどう変わり、どのような対応を講じる必要があるのか。長年、プラスチックのマテリアルリサイクルを事業として展開してきた観点で、3回に分けて、分かりやすく解説いたします。
 また環境省が「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」の普及啓発のための特設ページを公開し、本法律に関するオフィシャルな情報を集約・発信していますので、そちらも合わせてご確認下さい。画像1-Mar-31-2022-12-39-36-12-AM             

 第3回目はプラスチック製品の「排出・回収・リサイクル」のフェーズに焦点を絞り、プラ新法について解説いたします。
 本シリーズの第1回「設計・製造」、第2回「販売・提供」で解説したように、プラスチックの資源循環を促進していくには、プラスチック製品のライフサイクルの川上から施策を打つことが重要です。今回の新法の施行により、サーキュラーデザインの観点でものづくりを行うことや、プラスチック製品の使用の合理化や排出抑制が標準化することが期待されます。しかし、それらはあくまでもプラスチックの資源循環をアシストする取り組みであり、現実的には、プラスチック廃棄物が資源に変わり循環するかは、「排出・回収・リサイクル」のフェーズにかかっていると言っても過言ではありません。
 一般社団法人プラスチック循環利用協会によると、2020年における日本のプラスチック廃棄物の総排出量は822万トン。そのうち、マテリアルリサイクルされている173万トンと、ケミカルリサイクルされている27万トンを合わせた200万トン(全体の1/4)のみが資源循環した結果となっています。
 言い換えると、サーマルリサイクル(エネルギー回収)されている509万トンと単純焼却・埋立されている113万トンを合わせた622万トン(全体の3/4)は資源循環していない状況です。そして、これらが「排出・回収・リサイクル」のフェーズでフォーカスされている対象と考えられます。
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 資源として循環していないということは、それだけリサイクルの難易度が高いということを意味しますが、この状況を打破するために、今回のプラ新法の施行があるのです。
 「排出・回収・リサイクル」のフェーズでは、「市区町村」「プラスチック使用製品の製造・販売事業者等」「排出事業者」の3つの主体別に、資源循環を促進していくための措置があります。
画像3出典:経済産業省 環境省「プラスチックに係る資源循環の 促進等に関する法律について
(1)市区町村による分別収集・再商品化
 多くの市区町村ではこれまでも容器包装リサイクル法に基づき、家庭から排出される容器包装廃棄物の分別収集を行ってきましたが、プラ新法の施行に伴い、これまで一般廃棄物として廃棄されてきたプラスチック使用製品廃棄物も分別収集し、再商品化していくことが求められるようになります。
 市区町村による分別収集・再商品化に関する措置には、①容器包装リサイクル法に規定する指定法人(公益社団法人日本容器包装リサイクル協会)に委託して再商品化を行う方法と、②市区町村が単独または再商品化実施者と共同して再商品化計画を作成し、国の認定を受けたうえで、認定再商品化計画に基づいて再商品化を行う2つの方法があります。
画像4-1出典:経済産業省 環境省「プラスチックに係る資源循環の 促進等に関する法律について
 国民の立場としては、今後、住まいの市区町村のごみの分別基準が変更される可能性が高まることを理解し、より一層の分別排出に協力する必要があるでしょう。
 再商品化にあたっては、選別から再生原料化までを行える事業者が限られていることや、最終製品がパレットや擬木、車止め、プランターなどの資材類に限定され、ダウングレードリサイクルになってしまうなどの課題もありますが、取り組みを進める中でブレークスルーが起こることを期待します。

 

【パンテックが携わった関連事例】
神戸市|プラスチックに特化した回収ステーションでの取り組み
• パンテックが参画するJ-CEPの取り組みの一つ。
• 神戸市長田区にあるふたば学舎にプラスチックに特化した回収ステーションが設置され、市民の皆さんからこれまで一般廃棄物として処分されていた使用済みのプラスチック使用製品を回収。
• 回収されたものをパンテックにて収集・運搬・分別・再生原料化のリサイクルプロセスをプロデュース。
(2)製造・販売事業者等による自主回収・再資源化
 製造・販売事業者等には、自主回収・再資源化が求められるようになります。これは「拡大生産者責任」(EPR:Extended Producer Responsibility)に基づく措置と理解することができます。
 昨今、大手のメーカーが小売店舗や公共施設等に回収ボックスを設置して、対象とする使用済み製品を回収し、リサイクルするといった事例がありますが、今回のプラ新法では、そうした製造・販売事業者による自主的な取り組みをさらに促進させるための制度が創設されます。
 それが、プラスチック使用製品の製造・販売事業者等が作成した自主回収・再資源化事業計画を主務大臣(経済産業大臣、環境大臣)が認定するというもの。その認定を受けた事業者は、廃棄物処理法に基づく業の許可がなくても、使用済みプラスチック使用製品の自主回収・再資源化事業を行うことができるというインセンティブが与えられます。ただし、その場合であっても、廃棄物処理法における業の許可以外の、廃棄物処理法に基づく規定(処理施設の設置許可等)は引き続き適用されることになりますので注意が必要です。画像5-1     
出典:経済産業省 環境省「プラスチックに係る資源循環の 促進等に関する法律について
 パンテックではこれまでにも製造・販売事業者等による自主回収・再資源化および再商品化のリサイクルプロセスのプロデュースに携わってきました。その経験から、自主回収の場合、事前に回収基準を明確にしていれば、回収アイテムの品質はある程度担保できるのではないかと考えます。一方、インセンティブを用意するなどの工夫がなければ、回収量を確保することは容易ではありません。また、回収拠点が複数になる場合が多く、各拠点で回収したアイテムを集約する際には、ミルクラン方式を取り入れるなど、効率的な手法を検討する必要があります。そのため、導入段階では、回収エリアを限定してスキームを運用しながら改善を行い、徐々に水平展開を図っていくことが良いかと思います。

 

【パンテックが携わった関連事例】
株式会社ファンケル様|使用済みの化粧品容器を植木鉢にリサイクルして寄贈
• ファンケル様の直営店で使用済みの化粧品容器を店頭回収。
• 分解・洗浄済み容器をパンテックにて粉砕、再生原料化し、植木鉢にするリサイクルプロセスをプロデュース。
• ファンケル様より植木鉢を「ガーデンネックレス横浜」(横浜市主催)に寄贈。

 

(3)排出事業者による排出の抑制・再資源化等
排出事業者には、排出の抑制・再資源化等が求められることになります。これは廃棄物処理法における「排出事業者責任」に基づく措置と言えます。これまでにも排出事業者は同法に基づき、排出物の適正処理が進められてきましたが、さらにプラスチックの資源循環を促進させるために、排出の抑制・再資源化に取り組むことが求められます。とりわけ、前年度におけるプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出量が250トン以上の事業者は、「多量排出事業者」となり、主務大臣(経済産業大臣、環境大臣)が定める判断基準に照らして、排出の抑制・再資源化の取り組みが著しく不十分と認められる場合には、勧告・公表・命令の対象となり、命令を無視した場合には「50万円以下の罰金」の対象となります。なお、排出量は事業所単位ではなく、事業者単位での計算となります。
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出典:経済産業省 環境省「プラスチックに係る資源循環の 促進等に関する法律について

 事業活動に伴って排出されるあらゆるプラスチック使用製品産業廃棄物等が対象となりますので、工場で排出されるプラスチック端材などはもちろんのこと、店舗や倉庫で排出されるストレッチフィルムや緩衝材、オフィスで排出されるボールペンやクリアファイル、バインダー等も対象となります。
 また、製造・販売事業者等による自主回収・再資源化と同様、排出事業者による排出の抑制・再資源化等を促進していくための制度が創設されます。本制度により、排出事業者等が作成した再資源化事業計画を主務大臣(経済産業大臣、環境大臣)が認定した場合に、認定を受けた事業者は廃棄物処理法に基づく業の許可がなくても、プラスチック使用製品産業廃棄物等の再資源化事業を行うことができるようになります。ただし、その場合であっても、廃棄物処理法における業の許可以外の、廃棄物処理法に基づく規定(処理施設の設置許可、産業廃棄物管理票の交付等)は引き続き適用されることになります。なお、この再資源化事業計画を申請できるのは、排出事業者もしくは複数の排出事業者からの委託を受けた再資源化事業者に限られます。
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出典:経済産業省 環境省「プラスチックに係る資源循環の 促進等に関する法律について

 これを機に、更なるプラスチックの資源循環の拡大に向けて、現状の取り組みを見直すことも必要ではないでしょうか。これまで産業廃棄物として処理していたものを資源として循環させていくためには、廃棄物の選別、粉砕による輸送効率の向上などを検討しなくてはなりません。特に「多量排出事業者」に該当する事業者の皆様は、共に取り組めるパートナー選定を含め、スキームの総点検を行うことが重要かと考えます。

【パンテックが携わった関連事例】
株式会社積水化学工業様|全グループ会社の「2030年マテリアルリサイクル率100%」に向けてプラスチックリサイクルをトータルプロデュース
• 積水化学グループ様が目指す「2030年マテリアルリサイクル率を100%」に向けて、パンテックがプラスチックリサイクルのトータルプロデュースを実施。
• 全国に58ある積水化学グループの各拠点の排出量・排出アイテムを精査し、大きな費用対効果が見込める4工場を選定し、訪問調査を実施。
• 対象工場から排出されるプラスチック廃棄物のうち、15%のマテリアルリサイクル化を提案。

 冒頭の通り、「排出・回収・リサイクル」のフェーズでフォーカスされているのは、現在、サーマルリサイクルや単純焼却・埋立されている622万トンです。今回のプラ新法で資源循環を促進させるために新制度が創設されますが、これまでの実績からも分かるように、これらを再資源化していくことには課題が伴います。そのため、プラ新法が施行され、新制度の運用がスタートしても、一気にプラスチックの資源循環が加速するわけではありません。


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 プラスチックのライフサイクルに関わる人たちの環境意識が高まることで行動変容が促され、サーキュラーデザインの観点から商品設計が行われ、日本国内に回収・リサイクル網がくまなく整備されれば、その状況も変わるでしょう。しかしそれには時間がかかります。
 今回のプラ新法の施行では、革新的なソリューションが提案されたわけではありません。あくまでもプラスチックの資源循環を促進していくため契機の一つであり、問題提起としての側面が強いのではないかと思います。これまで再資源化ができていなかったものをリサイクルしていくということは、未踏領域への挑戦です。
 深刻化する環境問題を前に、理想と現実のギャップを早急に埋める必要があります。プラスチックのライフサイクルに関わるあらゆる業界が互いの知見を持ち寄り、共創(Co-Creation)し、ソリューションを創出していくことが、今、求められています。
 資源として循環するプラスチックの質と量を引き上げる。私たちパンテックは、「環プラ®︎」プロデュースカンパニーとして、強い意志を持って、この挑戦に立ち向かいます。
 プラ新法への対応をはじめ、プラスチックのリサイクルや再生原料の調達にお悩みの際は、お気軽にお声がけください。

 

まとめ

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