2022年4月7日、神戸市立ふたば学舎に設けられたプラスチック資源に特化した回収ステーションにて、地域の皆様より回収した使用済みプラスチック資源をマテリアルリサイクルして制作されたエコベンチのお披露目会が行われました。
本取り組みは兵庫県神戸市とアミタ株式会社様が主体となって展開されており、連携団体として「ジャパン・サーキュラー・エコノミー・パートナーシップ」(以下、J-CEP)に参画しています。パンテックはJ-CEPの加盟企業の一員として、回収された使用済みプラスチック資源の分別、再生原料化のプロセスに携わりました。
使用済みプラスチックを拠点回収
昨年11月から約3か月間、神戸市長田区にある神戸市立ふたば学舎(以下、ふたば学舎)の2F「エコエコひろば」内にプラスチック資源に特化した回収ステーションが設けられ、地域等と一体となり一歩進んだプラスチックリサイクル「まわり続けるリサイクル」の推進を図るための実証が行われました。
本取り組みは大きく2つの特徴があります。
1つは「容器包装リサイクル法」(以下、容リ法)の対象外アイテムも回収対象としたことです。各家庭から排出されるプラスチックについては、これまでも容リ法に基づき、「PETボトル」と「プラスチック製容器包装」が回収・リサイクルされていましたが、今回の取り組みでは比較的リサイクルがしやすいPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)の3つの樹脂に限定した上で、ペットボトルキャップやCD・DVDケース、プラスチック製のバケツ・洗面器などを主な回収対象としました。つまり、これまでサーマルリサイクル(熱回収)や焼却・埋め立てなどに回ってしまっていたアイテムを資源として循環させるアップサイクルにチャレンジしたのです。
もう1つの特徴は、拠点回収を地域コミュニティの醸成に結びつけたことです。ふたば学舎は講座やイベントが開催されたり、貸室があったりと、地域のコミュニティ拠点として活用されている施設です。そこに資源回収ステーションが設けられたのですが、単に使用済みプラスチックを回収する場所としてではなく、コーヒーが飲める「くつろぎスペース」の併設や、図書館機能(まちライブラリー)を持たせたり、衣類や陶器類(皿、カップなど)など持ち寄り、リユースを促す仕組みが取り入れられています。回収拠点に付加価値を持たせることで、気軽に立ち寄れるスペースとして地域の方々に親しまれたことが、使用済みプラスチック資源の回収量の拡大にも好影響を与えることになりました。
ベンチにマテリアルリサイクル
資源回収ステーションで地域の皆様より回収された使用済みプラスチックはパンテックが引き取り、分別・再生原料加工を施しました。
上述の通り、本取り組みでは回収対象を限定したとは言え、メーカーや形状を問わず、様々な種類の使用済みプラスチックを対象としています。そのため、回収アイテムにはラベルやシールなどが付いているものや印刷されているもの、金属パーツが付いているものも含まれます。また複数種類の樹脂で構成されているものもあり、異物の混入や樹脂毎の融点の違いから、マテリアルリサイクルを行うハードルは非常に高いものがありました。
ふたば学舎で回収された使用済みプラスチックをまずは倉庫に運び入れ、異物や対象樹脂以外を除くため全てのアイテムを確認し、手選別を行った後、粉砕機に投入。そして粉砕品を均一に攪拌した上で、金属片等を磁力(マグネット)選別で取り除き、再生原料化を実施しました。
再生原料化の工程では、異物が多く含まれていること、そして融点の高い樹脂が含まれていることなどが原因で、機械の目詰まりが数回発生しましたがリサイクルペレットを製造することができました。
そうして出来上がったリサイクルペレットを使って、三井化学株式会社様の提携工場にてベンチが制作されました。リサイクルペレットは主にベンチの背もたれ部分(中間層)に使われ、部材の約90%がこの原料によって作られています。
ふたば学舎では地域の方々からご家庭で不要になった使用済みプラスチックを、洗浄し、種類ごとに分別して持ち込んでいただきましたが、それでも異物の混入を避けることや樹脂毎の事前分別を徹底することは困難です。再生原料化を効率的に行い、プラスチックの資源循環を促していくためにも、分別回収の精度を高めていくことが今後の課題と言えそうです。
今月4月1日に施行されたプラ新法においても、市区町村によるプラスチック使用製品廃棄物の分別収集・再商品化が求められるようになりましたが、今回の取り組みは、その先行事例としても捉えられるかと思います。これまで資源としてリサイクルされてこなかったアイテムを循環させていくことには課題が伴うものの、回収量を増やしていくためには、今回のように、地域の方々に楽しみながらプラスチックの資源循環の取り組みに参画してもらうということが重要ではないでしょうか。
今後この取り組みは神戸市内の数か所で水平展開される予定です。