2020.10.22

海洋プラスチックは有効活用可能なのか ~美しい資源循環の輪を描くために~ vol.2

私たち人間が、普段使用している便利なプラスチック製品。
しかしながら、人々の勝手な判断や思い込みで自然界に投棄されたプラスチックが、ゆくゆくは海洋プラスチックとなり、地球環境に悪影響を及ぼしているということを前回ブログでお伝えさせて頂きました。

前回ブログはこちらから

とは言ったものの、一度海へ流れついたプラスチックが、
一体どのようにして我々の生活に悪影響を及ぼしているのか?と、
疑問に感じておられる方もいるのではないでしょうか。

今回は、改めて海洋プラスチックが私たちに与える影響についてご紹介いたします。

海洋プラスチックは、「海洋ゴミ」と総称されるうちの一つであり、
海洋環境の悪化、景観への悪影響、漁業や観光への影響といった
諸問題を引き起こしています。

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上記写真を見ると、ペットボトルが数多く浮かんでおりますが
その他にも海洋ごみとして問題となっているのが、レジ袋やたばこの吸い殻をはじめ、釣り用具、さらには洗濯時の衣服の擦れから生じる繊維くずといった物までが、日本近海だけではなく、世界各地の至る海で観測されているのです。

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(引用:WWFジャパン 海洋プラスチック問題について 2018/10/26 https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3776.html

さらに上記図のとおり、人工物であるプラスチック製品は自然に還るまで莫大な時間を要します。
アルミは金属ですが、そのほか製品については全てプラスチックから作られており、釣り糸に至っては600年もの時間を要してようやく自然へと還ります。

この自然に還るまでの莫大な時間、「海」という過酷な環境下において、プラスチックは強い太陽光や紫外線に長時間晒される、あるいは海流に乗って他の浮遊物とぶつかることで細かく砕かれ、肉眼では確認することが難しい0.5㎜以下の「マイクロプラスチック」と呼ばれるものに変化します。

このマイクロプラスチックを、魚や海獣たちがエサだと勘違いして飲み込むことで、生物たちの体内に徐々に蓄積され、やがて人間が食料として口に運んだ際に人体へ摂取される、といった現象が世界各所で起こり始めているのです。

現状、私たちの体内に取り込んでしまったとしても、体外へ排出されるため、大きな健康被害は生じていませんが、マイクロプラスチックの特性として、化学物質が付着し易くなっているため、海洋を漂い続ける中で付着した有害な物質や、魚や海獣の体内に蓄積され続けている間に、マイクロプラスチックが毒素を溜め込む可能性もあり、油断は禁物であると言えるでしょう。

石油製品を作るのも使うのも、この地球上においては私たち人間のみです。
だからこそ、自分たちで出したものは最後まで面倒を見るという当たり前の事を、個人単位だけではなく、企業側としても認識することがこれからの時代には必要不可欠なのです。

では、今回も海外の海洋プラスチックを有効活用した事例を二つご紹介いたします。
②の事例は海との相性もピッタリな好事例です。

事例でひも解く海外のサーキュラーエコノミー ~海洋プラスチック編~

1. トレック社がBontragerブランドで海洋プラ由来自転車ハンドルグリップを販売開始

トレック社の傘下ブランドである自転車部品メーカーのBontrager社は、海洋プラスチック由来のハンドルグリップを販売開始しました。
Bontrager社は昨年、自社の人気商品である水筒ホルダーを使用済み漁網で製造することを発表。
1年間このホルダーを製造することで44,000平方フィートの漁網が海に流れるのを防ぐことができるとのことです。   
Bontrager社のグリップはデンマークにあるPlastix社との新たな協業から生まれたものです。
Plastix社は、世界の漁港や漁網メーカー、廃プラスチック回収業者から漁網や紐(ロープ)を収集し、それらをリサイクル資源とし、「Green Plastic」を生み出しています。
Bontrager社が海洋プラスチック由来の製品を手掛けたことは、問題解決に向け企業同士がパートナーシップを構築し協業することの成功事例であり、革新に拍車をかけ、大きなメリットがあることを示しています。
全文はこちら(英文)↓
https://www.triplepundit.com/story/2020/bike-grips-circular-economy/121211

 

2. 姉妹ビジネスウーマンが海洋プラ由来水着ビジネスを起業

地球を救おうという熱意を持っている、MichelleとAngela Morganの姉妹が、SeaMorgensという会社を起業し、海洋プラスチック由来の持続可能な水着を開発し、販売を開始しました。
Morgan姉妹がデザインした水着は環境にやさしいエコフレンドリーなものとなっており、全てプラスチックボトル(PETボトル)や海で浮いている漁網(ゴーストネット)、古い絨毯(海に流れ込んだ絨毯)からできています。

水着に使われている無地生地は再生PET繊維のポリエステルからなり、プリント生地は漁網や絨毯などを由来とするナイロン繊維からできています。
また、ファスナーも省く設計にすることによって、新たな廃プラスチックが発生するという問題を避けることができます。
決定するのに時間を要した会社名ですが、社名 SeaMorgensの「Morgens」にはイギリスとウェールズの神話で「人魚」という意味があります。また、私たちの名字である「Morgan」に近いため、SeaMorgens という会社名に決定しました、とのこと。
全文はこちら(英文)↓
https://www.business-live.co.uk/manufacturing/sisters-turn-plastic-marine-waste-18790925

 

 

いかがでしたでしょうか。

ただ単に海洋プラスチックからモノ作りをするのではなく、
これからの時代は製品を使用する際に地球環境へ負荷をかけない開発設計を、製品ライフサイクルの中に入れ込んで検討をしていく必要があります。
美しい地球環境を守っていくうえで、人間がやるべきことを一つずつクリアしていけば、海洋プラスチック問題もまた違った進展を見せるかもしれません。

次回のブログでは、海洋プラスチック発生を未然に防ぐために企業や、個人として取り組みが可能な事例についてご紹介いたします。
どうぞお楽しみに。

 

<<あとがき>>

私たち人間の心無い不法投棄で地球環境に悪影響を与えることは勿論問題ですが、2021年1月より適用される新たなバーゼル条約によって、海外向けに輸出していたプラスチックの行き先が無くなる可能性も出てきています。

行き場の無くなったプラスチックが日本国内にダブつけば、新たな環境汚染にも繋がりかねません。
プラスチックを製造あるいは使用される企業様においては、「既存のリサイクルフローや処理フローで間に合うから」と過信せず、この機会に貴社廃材の有効活用についてご検討いただくとことをご提案致します。
ご興味・関心をお寄せいただきましたら、是非下記お問い合わせフォームよりご連絡ください。

執筆者:パンテック ブログ編集部

まとめ

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